【産業天気図・半導体】半導体需要の低迷が長期化、09年前半も「雨」が続く
08年10月~09年3月 | 09年4月~9月 |
半導体業界の2008年度後半の見通しは従来通り「雨」、続く09年度前半の見通しは従来の「曇り」から「雨」へと変更する。理由は半導体需要の低迷長期化だ。
半導体産業の見通しについては、2種類の考えがあった。ひとつは供給側を重視する見方。たとえば半導体受託製造世界首位の台湾積体電路製造(TSMC)の蔡力行(リック・ツァイ)CEOは、「半導体産業は過去の経験に学び、今回は景気減速に合わせ迅速な生産調整を実施してきた。その結果、半導体メーカーから電子機器受託製造メーカーや完成品メーカーまでサプライチェーン全体の在庫は01年のITバブル崩壊当時と比べれば低水準」とする。
もうひとつは需要側を重視する見方。「今回の景気悪化による需要縮小は、どのくらいの落ち込み幅で、いつまで続くか、計り知れない」(半導体製造装置メーカー役員)といった具合だ。その後、TSMCでさえ、12月1日には10~12月期の業績見通しの下方修正を余儀なくされた。結論として、需要急落に直面した半導体産業は、従来にない勢いで減産に次ぐ減産に踏み切っている、ということになる。
では半導体産業の減産が今回はなぜ従来になく速いのか。半導体ウエハ大手によれば要因はふたつある。ひとつの要因は「ファブレス半導体企業の比重が高まったこと」。設計・開発に特化するファブレス半導体企業は自社工場はもちろん倉庫も持たない身軽さが身上だけに、需要減少が見込まれると受託製造企業への発注を即座に減らす特性がある。そうした特性を持つファブレス半導体企業の占める比重は01年のITバブル崩壊当時の約13%から前07年には約22%に上昇したと推定されているためだ。
もうひとつの要因はサプライチェーンマネジメントのソフトの進歩だ。各社ともこうしたソフトの導入によって、在庫削減指示を直ちに実施するようになった。こうした理由から、景気後退に沿う格好で今後も半導体産業の市場規模は縮小すると見込まれる。
とりわけ日本勢は3つの逆風に直面している。
逆風の第1は円高だ。半導体産業の展望を最大公約数的に示すのが主要66社が参画する世界半導体市場統計であり、11月18日公表の「2008年秋季半導体市場予測」では08年の世界市場は前年比2.5%増の2619億ドル、09年は同2.2%減の2561億ドルと5月時点の予測から下方修正され、うち09年は01年以来8年ぶりのマイナス成長とされた。
しかも、それを円換算するとさらに状況の厳しさがわかる。08年は円高による換算目減りもあり同7.4%減の27兆8701億円、09暦年は同1.0%減の27兆5872億円と2年連続の縮小見込みだ。しかも足元の日本市場はさらに厳しい。世界市場に占める日本市場の比重が01年当時の23.8%から18%台へと低下傾向にあることも加わり、日本市場の08年は同8.5%減の5兆2585億円、09年は同2.6%減の5兆1204億円へ縮小との予測だ。これが日本勢の業績を直撃する。
逆風の第2は需要構造の異変だ。日本勢は1990年代前半まではDRAMなどパソコン向けに注力し、それが挫折した90年代後半以降はデジタル家電向け、加えて2000年代後半以降は車載電装品向けに活路を見出してきた。だが今やその車載電装品向けも厳しい。「納期3カ月前に来る自動車メーカー側からの内示情報に従い見込み生産するが、納期前日に来る確定注文が内示情報より下振れしていることが最近は常態化してしまった」(半導体商社)という。トヨタ自動車はじめ車載電装品向けは半導体産業にとって需要の安定性が魅力だったが、その期待は砕かれてしまった。
逆風の第3は設備投資の困難化だ。とかく日本勢は00年以降のファブレス企業と受託製造企業による水平分業化のなかで存在感を低下させてきたが、ここにきて再び垂直統合化への動きが見えてきた。世界最大級の半導体回路設計(IP)供給企業である英国アーム社ですら、「最先端の製造技術開発に取り組む半導体メーカーは世界で3、4社に限定されてきてしまい、そのなかの一社と密接な協業関係を構築する『再統合』が必要なことに気づいた」(同社)と話す。
かねて微細加工化はじめ製造工程技術に強みを持つ日本勢にとってこの「再統合」は本来ならば光明。だが今や半導体産業で最先端の製造技術開発に取り組む3、4社とは米国インテル、韓国サムスン電子、台湾TSMC、加えて米国IBMという海外勢4社だ。日本勢は総花的な経営体質のなかで半導体事業のみに資金を傾注することが難しく、伝家の宝刀である製造工程技術に磨きをかけられないためだ。おかげで約10年ぶりの「再統合」の波に乗りきれない懸念がある。
半導体国内首位の東芝<6502>の業績に関し、「東洋経済オンライン」では、会社側の通期営業益1500億円の下方修正計画も達成は難儀と予想している。会社側計画では4~6月期実績で20%低下、08年4~9月期実績で25%低下だったNAND型フラッシュメモリの前四半期比の価格が10~12月期には10%低下となることが前提だが、それは期待薄と予想しているためだ。実際、室町正志・東芝副社長によれば「下期も予想以上の価格低下が続いている」。そして目下のところ「09年後半からの再浮上が大きな目標」というのである。
(石井 洋平)
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