映画フロントランナーに学ぶ大統領選の変化 「政策から人柄」契機となるスキャンダル描く
メガホンを取るのは、『マイレージ、マイライフ』『JUNO/ジュノ』など、観客の価値観を揺さぶるような独特なタッチのヒューマンドラマが高い評価を受けるジェイソン・ライトマン。本作は彼にとって初の実話を基にした映画となり、ハートをはじめとした関係者から徹底的なリサーチを行い、リアルな物語を構築していった。
彼は『コンドル』『大統領の陰謀』『候補者ビル・マッケイ』など、1970年代の政治映画にも多大なるインスピレーションを受けたといい、当時の雰囲気を再現するために、撮影はデジタルではなく、35ミリフィルムで行っている。インターネットが世間に広まる以前の、1980年代の世界に観客を誘ってくれる。
本作主人公のゲイリー・ハートを演じるのは、『レ・ミゼラブル』『グレイテスト・ショーマン』などで知られるヒュー・ジャックマン。情熱と優れた手腕を持つ一方で、とげとげしさやよそよそしさを感じさせるハートという上院議員の役を、ハリウッドきってのナイスガイとして知られるジャックマンが演じることで、非常に複雑で、多面的な人間性が感じられるようになった。
そしてライトマン監督もジャックマンの役作りを絶賛する。「最初の頃、ヒューが資料でパンパンになった厚さ7.5センチもあるようなバインダーを持ち歩いているのを見かけたんだ。『それを全部読むつもりなのかい?』と尋ねたら、『これはもう読み終えた分で、5冊あるうちのひとつなんだよ』と答えた。彼の役作りはそれくらいすごいんだ」。
映画に出てこないハートのスピーチも暗唱
ハートについていろいろと調べた彼は、映画に出てこないハートのスピーチも暗唱できるようになるほどに調べ上げたという。そしてハートにも直接会い、話をいろいろと聞くなど、入念な役作りを行った。「この役をきちんと演じるうえでもっとやれることがあったとは決して思いたくないんだ」というジャックマン。そんな彼の情熱は周囲の人間に大いに刺激を与えた。
本作はハートの物語であると同時に、彼を取り巻く女性たちの物語でもある。妻のリー・ハートは、夫の不貞に傷つきながらも、それでも夫のサポートを買って出ている。後にリーは「皆さんは、わたしが恥をかかされたと感じるべきだと思っているんでしょうけど、そのような単純な感情は若さの特権です。わたしたちの結婚もお互いに対する愛情も複雑なんです」と語っている。
そのリーを演じるのは、ライトマン監督の『マイレージ、マイライフ』でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたヴェラ・ファーミガ。ファーミガ自身も「心が壊れているときに、こんな嵐を乗り切るためには、堂々としたコミットメントが必要だと思う。結婚の複雑さと、一生誰かを愛するという約束の困難さを教えられるわ」とリーへの敬意を抱き続けたという。
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