終電ちゃん×終電の神様、作者が語るウラ話 ストーリー作りの秘訣などエピソード満載

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阿川:マンガではどのようにストーリーを作るのですか?

阿川大樹(あがわ・たいじゅ)/1954年、東京都生まれ。東京大学在学中に野田秀樹らと劇団「夢の遊眠社」を設立。1999年『天使の漂流』で第16回サントリーミステリー大賞優秀作品賞を受賞。2017年『終電の神様』が第9回エキナカ書店大賞を受賞(撮影:尾形文繁)

藤本:キャラクターから入ることが多いですね。この電車にこういう人が乗ってきたら面白い、この路線だとこういう人が乗っているとか。そこへ後からストーリーをつけることが多い気がします。

阿川:「終電ちゃん」には鉄道のウラ側の知識がちりばめられていて、お得感もありますね。

藤本:豆知識的に入れることはよくあります。

阿川:僕は鉄道のことをよく知らないので。

藤本:僕もです(笑)。終電ちゃんの持ち物はマニアックなものが多いので、調べたうえで考えるのが意外と大変なんです。

「終電ちゃん」の性格と路線の関係は?

――各路線の「終電ちゃん」は性格がみんな違います。路線の特徴と終電ちゃんの性格には関連があるのですか?

藤本正二(ふじもと・しょうじ)/第67回ちばてつや賞一般部門にて、『終電ちゃん』が入選を受賞。『終電ちゃん』が初の連載作品となる)(撮影:尾形文繁)

藤本:あったり、なかったりです。僕がよく知っている路線では、路線の特徴が終電ちゃんの性格に出やすいのですが、あまりよく知らない路線は、調べてその路線の特徴を探し出して、性格を作ります。

阿川:山手線は性格がきついですね。

藤本:いろいろな路線の接続を待ったり、いろいろな乗客の相手をしたりしていると、きつい性格でなきゃやっていられないだろうと。そんなところから着想を得ました。

阿川:小田急はゆるい感じ。

藤本:中央線と山手線はよくやり合っているので、じゃあ、反対の性格を出してみようと。それが箱根のイメージに重なったという感じです。

阿川:マンガがうらやましいのは、コマをまたいだ途端に距離も飛べるし時代も飛べる。小説はページの途中で急に画面が変わると読者がついてこられません。かといって、コマをまたいだような展開を小説で丁寧に説明すると、非常に「たるい」ものになりかねない。だからマンガの小説化はハードルが高いと思います。

藤本:逆に心理描写をきめ細かく描けるのは小説のうらやましいところですね。キャラクターに言葉で説明させると負け、みたいな気持ちでやっていますが、すべてを絵で表現することは難しいです。「楽しい」みたいな単純な感情ならともかく、複雑な感情は絵にしづらい。

阿川:小説は、登場人物が鈍感だったり観察能力がなかったりすると、ストーリーが作れません。鈍感な人がいたら、その横に観察力がある人を置いて、その人の目から見た鈍感な人を書きます。登場人物が5人いて全員が鈍感な人だと小説を書くのはほぼ不可能です。

藤本:マンガなら心理描写は必ずしもいりませんからね。

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