成績の活用は企業にとってマイナスになるリスクがある
「成績を活用する」という決定は、学生に対する強いメッセージです。今回、大学の成績を活用すると決めた企業の人事部からは、学生から正しく理解されないのではないかと懸念する声も聞こえてきます。自社の採用活動の成功だけを考えるならば、大学の成績を活用することは、自社への応募数の減少につながることもあるかもしれません。
しかし、それでも企業の採用活動が大学教育や大学生の学業に対しての意欲を阻害している現状に対して、何らかの行動をするべきだと判断したのです。
企業の多くはこれまで、大学の成績を基本的には活用してきませんでした。ということは、応募者に対して「学生本人の人間力を面接などで判断して採用します」というメッセージを送っていたのです。
それが、今年の採用活動から大学の成績表を提出させるとなると、「大学の成績だけで判断される」「成績がよくないと不利になる」というような誤解をされてしまい、課外活動に力を入れていた学生から敬遠されてしまうかもしれません。
社名が公表されたのは人気のある企業ばかりですので、皆さんの中には、そのような企業なら応募者数の減少を気にしないのではないかと考えられる方も多いのではないでしょうか。しかし、それはまったくの誤解です。ほとんどの企業は、毎年、少しでもいい学生を採用するために、多大な努力と細心の注意を払っています。その中で、応募者数は学生からの認知度合いを測る、非常に重要な指標ととらえられているのです。
それでも、企業が成績を活用すると決めたわけ
そのような状況の中、これらの企業の人事部は、「大学教育と就職活動の負のスパイラル(連載第2回参照)を解消するためには、企業が採用活動時に大学の成績を活用することが重要である。そうすることによって初めて、多くの大学生が学業に力を入れるメリットが生まれる」という、本連載で提示してきた考え方に賛同し、自社の採用だけを考えるとリスクになるにもかかわらず、社会的な意義から、協力してくださいました。
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