次の質問どうぞ、河野外相「傲慢答弁」の波紋 しぼむ期待、「ポスト安倍」は石破氏が有利に

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ただ、首相に忖度したような最近の河野氏の言動に「ゴマすり専門の“ヒラメ政治家”のようで、幻滅した」(自民若手)との不信感も広がる。河野氏に期待してきたベテラン議員からも「小泉純一郎元首相の様に、変人を貫く潔さが人気の秘密だったのに、これでは単なる権力志向の政治家にしか見えない」(有力議員)との声が出始めている。

政界で河野氏は「超合理主義者」で知られている。「時間の無駄」「お金の無駄」などの理由で、政治家同士や省庁幹部との昼食時の打ち合わせなどでも「ほとんどハンバーガーで済ませていた」との伝説も残している。麻生氏の冗談もそこを突いたわけだが、そのこと自体が「旧来の自民党政治家らしくない河野氏の行動が、地元有権者だけでなく、多くの国民の期待につながってきた」(麻生派幹部)ことも事実だ。

首相が9月の自民党総裁選で3選を果たして以来、政界ではポスト安倍レースが大きな話題となっている。今回の騒動を受けて、「党内での河野氏に対する期待度も低下する」(竹下派幹部)との見方が広がる。政界関係者の間では「総裁選不出馬で『戦わない男』と評価を下げた岸田文雄政調会長のあとを追うように、河野氏への期待もしぼむ」(同)との声も出始めた。「このままでは、我が道を行く石破茂元幹事長がポスト安倍で相対的に有利になってくる」(石破派若手)との観測にもつながる。

日ロ交渉が河野氏の「災い」に

今年の新語・流行語大賞のトップテンの中で、政界関連で選ばれたのは「ご飯論法」だった。「朝ご飯を食べたか」との質問に「(パンを食べたのでご飯は)食べていない」とはぐらかすことで、「政治家が質問に対して論点をずらしたりごまかしたりする」ことへの揶揄でもある。外交の機微に触れることを聞かれて「次の質問どうぞ」とスルーする河野氏の応答ぶりは、河野氏自身がかねてから行政改革に絡めて情報公開の必要性を訴えてきたこともあり、「余計な質問は時間の無駄、という上から目線にしかみえない」(国民民主幹部)との批判は免れそうもない。

父・洋平氏は、河野氏の外相としての活動ぶりについて問われた際、「息子のことは一切論評したくない」と苦々しげに答えたとされる。今年の漢字に「災」が選ばれると、ネットでは流行語大賞の年間大賞となった「そだねー!」という書き込みがあふれた。その際、首相は「自分の今年の漢字」を問われると、従来の状況を一転させつつある自らの日ロ交渉に絡めて「転」を挙げたが、河野氏にとっては自身の「転」(姿勢転換)が、ポスト安倍レースでの「災」につながっているようにもみえる。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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