次の質問どうぞ、河野外相「傲慢答弁」の波紋 しぼむ期待、「ポスト安倍」は石破氏が有利に

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ロシアとの平和条約交渉で交渉責任者を務める河野氏は、臨時国会の質疑でも首相と歩調を合わせる形で「(自らの発言が)交渉に影響を与えることが十分に考えられるので、政府の立場を申し上げるのを控える」などと繰り返し、野党から「説明拒否だ」と批判されていた。外務省記者クラブは11日夕、外相宛ての「国民に対する説明責任を果たしているのかどうか、疑問を禁じ得ない。誠実な会見対応を求める」とする異例の申入れ文書を提出し、河野氏が「神妙に受け止めます」とのコメントを出す騒ぎとなった。

近年、永田町では事あるごとに政治とメデイアの関係が話題となるが、「答えたくない質問は一切無視」という河野氏の対応は「極めてまれな事態で、国民の知る権利の軽視ともみえる」(外交評論家)との批判が相次ぐ。河野氏の後見人とされる当選同期の菅義偉官房長官は記者会見で「(河野氏のことには)コメントしない」とかわしたが、与党内にも「記者の背後には国民がいるのに、『答えないのは分かっているだろう』という態度は傲慢としか受け止められず、政府の外交交渉への国民不信も拡大させかねない」(外相経験者)との苦言が相次いでいる。

この「次の質問どうぞ」騒動の前日に閉幕した臨時国会では、「移民政策への大転換」ともみられる改正出入国管理法を与党が強引な手法で成立させた。野党から「具体的内容がまったくないスカスカの法律で、政府もまったく説明しない」(立憲民主幹部)と激しく批判されたばかり。それだけに、自民党内にも「時間をかけて議論し、野党だけでなく幅広く国民の理解を求めるという本来の民主主義のルールが軽視されている」(自民長老)との危機感が出ている。

持論を曲げない「自民党の変人」

河野氏は首相とも並ぶ政界でも有数の「政治家ファミリー」の一員。父親は外相や官房長官を歴任した河野洋平元衆院議長、祖父は河野一郎元建設相で、文字通りの「名門3代目の政界エリート」というわけだ。ただ、自民党を飛び出して新自由クラブを結成した若き日の父・洋平氏と同様、政界入り後は「持論を曲げず、独自行動をおそれない」という行動もあって「自民党の変人」とされてきた。

とくに、行政改革がライフワークで、自民党の「無駄撲滅プロジェクト」のリーダーとして各省庁の行政の実態に斬り込み、民主党政権下の「事業仕分け」の原点となった。ただ、自ら「無駄の典型」と縮減を要求してきた外務省の一部予算について、外相に就任すると「間違っていた」と姿勢を転換した。他の先進国や中国の外相のように有事即応で外交交渉に臨むために必要として外相専用機の購入を求めて反発を買う場面もあった。「まさに君子豹変」(自民若手)なわけだ。

一方、こうした変身が永田町では「政治家としての幅が広がった」と評価され、菅官房長官らが河野氏を「ポスト安倍の有力候補」と後押しすることにつながった。過去に総裁選出馬の経験をもつ河野氏も、外相就任以来、「いつかは総裁に挑戦する」と意欲を隠さない。河野氏は、父・洋平氏の側近だった麻生太郎副総理兼外相の率いる麻生派に所属しており、麻生氏は河野氏の政治資金パーティで「間違いなく将来が期待されるが、一般常識に欠けている」とあいさつ。「あなたがそれを言うか」(麻生派幹部)との爆笑が会場を包んだ一幕もあった。

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