「ボヘミアン・ラプソディ」現象化への違和感 クイーンは愛すべき「変なバンド」だ
・通常の上映に加え、歓声や合唱OKの「胸アツ応援上映」も話題だ。リピーターが多いのは、どちらも体験したいという考えもあるからだろう。英語詞を字幕に入れるなど気が利いている。当時のフィルム・コンサートをオーバーラップさせている方も多いかもしれない。
・今世紀に入りポール・ロジャースやアダム・ランバートと共にクイーンの活動を再開、現役バンドとして話題を提供している。来日公演はアリーナ/スタジアム・クラスで実施。
・サッカーをはじめスポーツ大会で歌われる曲があり、世代、国を超えて知名度は広がる一方。
・そしてもちろん、ノスタルジー。仕事や子育てが一段落して「久々に若い頃に聴いた洋楽でも」となった場合にクイーンの名が浮かぶ人は多いはずだ。その意味では確かにあの頃を代表するロックバンドではある。
『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』以来のヒットか
洋楽ものの映画としての『ボヘミアン・ラプソディ』の日本での成功は、ドキュメンタリーも含めるならば『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』(2009)以来といえるだろう。クイーンとMJに浅からぬ縁があるのも興味深い。
欧米でも公開初週の興行収入が第1位となった国は多く、アメリカではシングル「ボヘミアン・ラプソディ」が『ビルボード』誌で33位に入った。これは1970年代、1990年代(フレディ・マーキュリー逝去を受けてのシングル・カット)そして2010年代と、20年ごとにヒットした珍記録といえる。
伝記映画としての面白さは、近年では『ジェームス・ブラウン~最高の魂を持つ男~』(2014、日本2015)に比肩すると思う。直後にドキュメンタリー映画『ミスター・ダイナマイト ファンクの帝王ジェームス・ブラウン』(2014、日本2016)が公開されたのもよかった。
別々のスタッフにより制作されたものなので偶然だったとはいえ、近い時期に公開された2本は互いの不足部分を補完し合っていた。今回のクイーンも近いうちにドキュメンタリー映画が公開されれば、上記の違和感や不満はかなり解消されるのにと夢想する。
その予定を耳にしない今、ドキュメンタリーに代わる映像ソフトとしてお薦めしたいのが、映画パンフレットのディスコグラフィーにも載っている「伝説の証~ロック・モントリオール1981&ライヴ・エイド1985」だ。これには特典としてブライアンとロジャーのコメンタリーが付いており、この時の裏話だけでなく、広くクイーンのことをいろいろと語り合っていて、ロングインタビューとして聞ける。
繰り返しになるが、今のクイーン人気は美しい面が強調されすぎている。その違和感は拭い切れない。このままだと博物館入りしてしまう。安易に「伝説のバンド」扱いされるこのムードが続くと、小学校の図書室の「偉人の伝記コーナー」に、フレディ・マーキュリーが並びかねない。「昔の偉い人」になるのだとしたら、ファンも含め、当時を知る人(含ファン)がすべて亡くなった今世紀後半でいいんじゃないだろうか。
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