「ボヘミアン・ラプソディ」現象化への違和感

クイーンは愛すべき「変なバンド」だ

筆者は1978年のシングル「バイシクル・レース」とアルバム『ジャズ』からという、少し遅れたクイーン実体験世代にあたる。1985年夏の「ライブ・エイド」をTVで観たのは18歳の時。いやはや大したバンドだとは思ったが、それは彼らが大規模な世界ツアーを終えた直後なので(映画はここも史実とは違う)、客いじりも含めて大会場に慣れているバンドだなぁ、フレディはやっぱり優秀なエンターテイナーだよなぁ、さすがだなぁと痛感しただけのこと。

そんな実体験ファンの1人としてまず書いておきたいのは、「クイーンは一貫して『変なバンド』だった」という点だ。

わざと物議を醸す、賛否両論を呼ぶほうへ向かうバンド

「伝説のロックバンド」と、特に今回の映画関連のいろいろな場面で書かれ、語られている。確かに知名度はかなり高かった。たとえば友人の兄や姉の部屋の、邦楽がほとんどというレコード棚に交ざっているのはイーグルズとクイーンということはよくあった。しかしイーグルズやザ・ビートルズ(すでに解散していた)のような「海外の憧れのスターバンド」ではなく、クイーンは「変てこなバンド」だった。わざと物議を醸す、賛否両論を呼ぶ方向へと向かうバンドだった。

つい最近知り合った、洋楽にはあまり興味がなかったという同い歳の男性も「クイーンってイロモノでしたよね」と話していた。そういう位置づけのバンドだったのだ。

また音楽的にも、クイーンはあの時代を「代表している」とは言いがたい。今の騒がれ方だと、彼らの音楽があの頃のロックの「ど真ん中」だと誤解されてしまう。それに対する危機感を筆者は強く持っている。あんな音楽をやるバンドはほかになかった。もちろん、褒め言葉だ。

ほぼすべてのロックバンドが持つブルーズルーツの泥くささは皆無に等しい。しかし音のハードさとスピード感はハードロックのそれ。プログレッシブロックの構成力やグラムロックの華麗さも持っていた。誰もが歌えるポップな曲もある。しかしどのジャンルにも属さないコウモリ的な存在だった。ロック以前のクラシックやトラッドフォーク、ミュージカル、ボードヴィル・ショーといった要素も強く、典型的なロック的メロディーやコード進行、構成ではないものが多かった。

全員が優れた作曲家で、リードシンガーが3人いる彼らは、アルバムどころか楽曲ごとにまったく違う音楽を作っていたが、そのどれにも「クイーンらしさ」があった。これは非常に不思議でユニークで、そしてすばらしい点。

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