韓国経済、「間違いだらけ政策」で「青息吐息」 文政権の「公共事業削減政策」が庶民を直撃

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チョンさんの月収は、トラックの返済とメンテナンス費用、保険料や燃料代を差し引くと、約230万ウォン(約23万円)程度だ。建設業が好況だった1年前と比べ、半分程度にまで下がったという。

今年1月以降、チョンさんが住む仁川の町では新たな公共事業は始まっておらず、より小規模な住宅建設プロジェクトも近く完了する。

「もし100万ウォンの利息を払えなかったら、トラックが競売にかけられてしまう」。チョンさんはそう言うと、2時間ほど離れた金浦にある建設現場での夜勤に出かけていった。

韓国建設産業研究院のLee Hong-il研究員は、建設業の減速により、9万2000人の雇用が失われ、2019年の韓国全体の経済成長を0.4ポイント下押しすると見込んでいる。

朴槿恵(パク・クネ)前政権による公共事業の大半が、需要を過剰に見積もったプロジェクトだったため、韓国の建設ブームは長続きするものではなかった、と多くのエコノミストは指摘する。

韓国道路公社のデータによると、2008─17年に開通した高速道13路線の平均利用率は58.1%にとどまっている。

韓国財務省は、2019年のインフラ事業予算は既存プロジェクトの完成に集中し、新規事業は削減する方針だ。20カ国・地域(G20)の中で、韓国はすでに1平方キロ当たりの高速道路の長さが最長で、鉄道路線の長さも6位にあるためだ。

韓国の記録的な低出生率と高齢化により、ソウル近郊では住宅建設のペースが鈍化している。ソウル首都圏に30万戸の住宅を建設する文政権の計画は現段階では進展がなく、デベロッパーは、首都圏外における住宅建設には消極的だ。

郊外で進められている住宅プロジェクトのほとんどが、完成間近の段階にある、とアナリストは言う。建設契約の5分の1程度を占める改築工事も、経済の鈍化や安全基準の強化を受けて減速している。

「建設会社の長期見通しは暗い」とハナ金融投資のアナリストChae Sang-wook氏は語る。

海外で攻勢を強める大手、国内の仕事は枯渇

こうした状況を背景に、建設大手会社は、特に東南アジアの都市部での開発やインフラプロジェクト受注に成功するなど、海外で攻勢を強めている。

国際建設情報サービスによれば、サムスン・エンジニアリング<028050.KS>が1─11月に海外で締結した契約額は前年同月比で5.3倍となる69億ドル(約7850億円)に達し、サムスンC&T<028260.KS>の海外契約額も同282%増の35億ドルに上った。

大宇建設<047040.KS >も、同31%増の15億ドルの契約を結んだ。

だが、より規模の小さい会社には、海外に目を転じる選択肢はない。そして国内の仕事は枯渇しつつある。

「いまは、ただ様子見するしかない」と、中堅建設会社の幹部は言う。「以前はうちで建てたアパートはほとんど売れたが、今では半分ぐらい売れ残っている」

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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