ジェットスター、「中距離参入」の必然と不安 世界の中距離LCC競争にピーチに続いて参戦

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日本のLCC業界で中距離路線は一種のブーム状態にある。まず、今年2月にANAが2020年に傘下にあるバニラ統合後のピーチによる中距離国際線参入を発表。さらに、JALは中・長距離に特化したLCC準備会社「ティー・ビー・エル」の立ち上げを発表し、同じく2020年の就航を目指す。

いままでのLCC国際線は短距離が大前提だった。理由はLCCのビジネスモデルにある。そもそも、なぜLCCが「ローコスト」なのかというと、機内サービスを簡略化しているからだ。

加えて「単一機材」「短距離・多頻度」がカギとなる。単一機材にすることで、交換部品調達やパイロット、客室乗務員訓練を効率化できる。短距離・多頻度化により、飛行機1機ごとの機材回転率も向上する。

JALの戦略はちぐはぐか?

前出のエアバス新型機のように、「中距離を飛べる小型機」が登場したことも大きい。実際、ピーチもジェットスター・ジャパンに先んじて今年7月、2020年度に新型エアバス機を2機導入すると発表している。

日本発着の国際線LCC同士の激しい価格競争が起きている。チェジュ航空など韓国勢の台頭やエアアジアXなど東南アジア勢が猛追し、ピーチとバニラが統合したのもアジア勢台頭の対抗策と言える。各社は短距離国際線の過当競争の影響を緩和するため、東南アジアをはじめとする中距離国際線に進出しようとしているのだ。

JALはジェットスター・ジャパンに33.3%出資するとともに、今年7月に中長距離LCCのティー・ビー・エルを作ったばかり。今回のジェットスター・ジャパンの中距離国際線参入に対して、複数の業界関係者は「JALの子会社と中距離国際線参入の”共食い”は起きないのか」と、その戦略のちぐはぐさをいぶかる。

しかし、今のところ共食いの可能性は少なさそうだ。ジェットスター・ジャパンとティー・ビー・エルは市場が明確に異なる。今回ジェットスター・ジャパンが導入する新型エアバス機はあくまで小型機なのに対し、ティー・ビー・エルが採用するのはボーイング製の1万5000キロメートル近く航行できる中型機だ。JALの赤坂祐二社長が「(ティー・ビー・エルは)アジアだけでなく、欧米に路線を伸ばす」と語るように、より長距離路線を視野に入れている。

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