ジェットスター、「中距離参入」の必然と不安 世界の中距離LCC競争にピーチに続いて参戦

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世界の「中距離LCC競争」はすでに始まっている。東南アジア各国でLCCを展開するエアアジアグループは、中長距離路線を担うエアアジアXを設立。このエアアジアXとシンガポール航空傘下のLCC、スクートが昨年、関西国際空港とハワイ・ホノルルを結ぶ路線に就航した。日系各社もこれ以上黙ってみているわけにはいかなくなった。

とはいえ、中距離LCCというビジネスにはすでに暗雲が立ち込めている。
先述したように、先行して中距離路線を展開してきたアジアのLCC各社が一部で路線撤退を余儀なくされているのだ。

エアアジアXはバリ島=成田線を2019年1月に、スクートは関空=ハワイ・ホノルル線を同年6月にそれぞれ運休する。スクートの親会社・シンガポール航空は「需要低迷のため」としているが、収益確保の難易度の高さに直面した形だ。先行したアジア勢も、いまだ中距離LCCの「正解」を見出せていない。

ジェットスターの逆張り戦略

ジェットスター・ジャパンの片岡社長は「運休するLCCとは使用機材が異なるため、コストモデルが違う」と話す。実際、上記2社は通路が2本ある通称「ワイドボディ型」の機体を採用しているが、ジェットスター・ジャパンが今回採用するA321LRは通路が中央の1本しかないサイズ。一般的に機体は大きくなるほど燃費が悪くなる。「従来の同型機より燃費は15~20%削減される」(エアバスジャパンのジヌー社長)。

「LCC路線の戦略は、訪日需要を取り込むことを念頭に置くのが鉄則」(業界関係者)とされるのに対し、ジェットスター・ジャパンの片岡社長は「(日本人の)レジャー路線を中心に検討する」と、日本人の観光需要の深耕という「逆張り路線」を行く。低価格のLCC登場で新たな観光需要を掘り起こした前例があり、ジェットスターの戦略を無謀と決めつけるのも、それこそ時期尚早だろう。

ただ、エアアジアXやスクートの例を見ると、中距離LCCが容易なマーケットでないことも事実。世界各社が血眼で探し求める中距離LCCのビジネスモデルという「宝の地図」を見つけ出す会社は、日本から現れるのだろうか。

森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケティング、アニメ・出版業界を担当。過去の担当特集は「サイバーエージェント ポスト藤田時代の茨道」「マイクロソフト AI革命の深層」「CCC 平成のエンタメ王が陥った窮地」「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」など。

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