中国ECが「ロボットレストラン」を始めるワケ 料理を作るのも運ぶのもロボットがやる

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こうして出来上がった料理を運ぶのも、またロボットだ。スタッフが料理をカートのような配膳ロボットに載せると、席まで自動で運ばれてくる。客が料理を取り出し完了ボタンを押すと、配膳ロボットは自動で元の位置に戻る仕組みだ。

現状では、慣れないお客に対する案内や料理の取り出しを手伝うために、ホールにも数人が配置されている。ただ、理論的にはこうした人手がなくても、レストランの運営は可能だ。ロボットが進化して遠隔管理が可能になれば、「完全無人」も夢ではない。

1年で1000店舗の出店を目指す

今回、ジンドンがロボットレストランを開業した狙いについて、レストラン責任者の唐思宇氏は「ジンドンはコンビニやレストランを含め、消費者に新しい体験を提供したい。さらに、これら無人技術をほかのパートナーに提供することで、新しい経済インフラを作りたい」と語る。

ジンドンは成長戦略として「無界小売」を掲げ、EC・物流機能と実店舗を組み合わせたビジネスモデルを標榜する。今回のレストランもその一貫だ。ジンドンにとってレストランを運営することは、実店舗での顧客データを得ることにもつながる。ジンドンはここで得たデータで料理の売れ筋を分析、来店客に対するレコメンド機能も提供する。

ロボットレストランはこの天津が初の出店だが、今後1年で1000店舗の出店を目指し、外部企業への技術提供も模索中だ。「中国の外食業はコックが足りない、店員がすぐ辞めるなどサービスレベルが不安定。こういう技術を提供することで、つねに安定したレベルのサービスや料理を提供することができる」(唐氏)。

中国ECトップで、最大のライバルであるアリババグループも、無人レストランやロボットレストランを展開する。中国・杭州にある有名料理店「五芳斎(ウーファンジャイ)」といった外部企業にも技術を提供し、人手不足の解消に一役買っている。ネット上からリアル市場へ、EC業者の争いの場は広がっている。

若泉 もえな 東洋経済 記者

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わかいずみ もえな / Moena Wakaizumi

東京都出身。2017年に東洋経済新報社に入社。化粧品や日用品、小売り担当などを経て、現在は東洋経済オンライン編集部。大学在学中に台湾に留学、中華エンタメを見るのが趣味。kpopも好き。

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