傾向を見ていこう。ここ最近の特徴は、航空業界の人気が高いということだ。
2018年卒生のランキングから、全日本空輸(ANA)がトップに躍り出て、昨年は1位全日空、2位日本航空(JAL)と、国内航空大手の2社がワン・ツーを占めた。これまでもキャビンアテンダント職を目指す女子学生の支持はあるが、2020年開催の東京五輪やインバウンド(訪日外国人旅行客)の拡大から成長する業界、との評価を男女問わずしていることが背景にある。ANAエアポートサービスやJALスカイなど関連企業も、トップ100位以内に顔を出しているのも特徴だ。
同様の理由で旅行業界の人気も高い。JTBグループを筆頭に、エイチ・アイ・エス(HIS)、近畿日本ツーリストなどがここ最近、上位にランクインしている。2025年の大阪万国博覧会の開催も決まり、インバウンド拡大の流れはもうしばらく続きそうな気配。これら2つの業界の就職人気は、まだ続くものと思われる。
一方、絶対的な人気を誇っていた金融業界は、ここに来て凋落の傾向が見える。2013~2017年卒まで、就職人気ランキングの1位はメガバンクの指定席で、さらにトップ10のうち7~8社が金融業界という状況だった。企業の安定・安心感や採用数の多さから、幅広い人気を集めていたが、ここにきて状況に変化が見られ、2018年卒ではメガバンクが1位に座を明け渡した。2019年卒のランキングではトップ10に入るメガバンクの数が減少している。
背景には金融業界の人員削減が挙げられる。金融とテクノロジーを組み合わせた「フィンテック」が広がってきており、現場でもAI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などが導入され、これまで人手に頼っていた事務処理作業が削減されている。その結果、各金融機関では人員の削減や配置転換を進めており、新卒採用でもかつてほどの大規模採用を行う金融機関が減った。
金融業界は採用数減らし、人気に陰り
そうした採用数の動向だけでなく、マイナス金利による金融機関の収益性低下も顕著になっており、将来性を含めて金融機関離れが徐々に広まってきている。今後はさらに就活生の金融離れが広がると予想される。ただ、それでも人気の上位にいることは変わりがない。第一志望ではないが、数社選ぶ中の1つに、金融機関を選ぶ学生も少なくないだろう。
前回、2019年卒の特徴としては、バンダイナムコエンターテインメントやオリエンタルランド、ソニーミュージックグループなど、エンターテインメント・アミューズメント企業がじわりと上位に進出していることも挙げられる。一昔前にはマスコミ業界が上位をにぎわせていたが、将来性やハードな労働環境であるとのイメージから鳴りを潜めており、集英社や講談社といった大手出版社が存在感を示している程度だ。
メーカーでは食品業界の人気が引き続き強い。女子学生の人気に支えられているのが大きな理由だが、明治グループ(明治・Meiji Seika ファルマ)やロッテ、味の素など、誰もが知る有名企業がランクインしている。
それ以外では広告代理店や、鉄道などの存在が目立つ。印刷会社は、大日本印刷と凸版印刷の大手2社が上位に入っている。成長性の高い電子部材といった印刷物以外の事業が柱になっていることを、学生はしっかりと把握している結果なのかもしれない。
このように人気になるのには理由がある。それは知名度だけでなく、企業の成長性や業界の将来性などを折り込んで、先輩たちも判断してきたのだろう。ランキングから「なぜこの企業が上位なのか」を調べることは、業界研究や企業研究の一歩にもなる。そしてそこから、関連企業やライバル企業など新たな発見をしていけば、志望企業の選択肢も増えていくことになろう。
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