東京五輪も争点となる台湾「住民投票」の行方 統一地方選で渦巻くポピュリズムとフェイク

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ところが9月中旬になると、情勢が大きく変わる。国民党の韓国瑜候補の人気が急上昇したのだ。

韓氏は「カネもない、人もない、命だけある」と訴える姿などがネット上で話題を呼び、自虐ネタを披露してバラエティ番組に出るなど、これまでの政治家とは違うイメージが広く受け入れられた。そこに20年に渡る民進党市政や蔡総統への不満、陳氏らエリートに対する反発が合わさった。

SNS上には韓氏を礼讃するコメントが目立つ。民進党からは韓氏の人気がネット上のフェイクニュースによって支えられていて、中国による選挙干渉があるとの指摘すら出始めた。

民進党が19日に公開した選挙用宣伝動画では、「中国のネット部隊が台湾に侵入している」と、中国による世論誘導に惑わされないよう注意を促した。ただし、中国が干渉しているという具体的な証拠は示されておらず、民進党内でも「苦し紛れに反中国の票をかき集めようとしているだけ」(民進党の地方議員立候補者)との白けた見方もある。

与党が北と南の重要都市を落としてしまう危機

台湾の統一地方選挙は4年に1回行われる国政選挙の2年後に行われ、現政権への中間評価の意味合いもある。そのため、与野党ともに国政選挙なみの選挙活動を展開。民進党は2014年選挙の圧勝の勢いが2016年の政権への返り咲きにつながっただけに、2020年の総統選挙の前哨戦として今回の選挙への注目度は高い。

高雄以外でも台湾の中心都市・台北では、前回勝利した無所属の現職・柯文哲候補が民進党と国民党の候補をリードしており、民進党は北と南の重要都市を落としてしまう危機に直面している。すでに現地では民進党の敗北によって蔡総統の民進党主席辞任は確実との見方も浮上し、「結果次第では総統も辞任すべき」との声が一部の民進党関係者から出ている。

台湾の行く末はもちろん、日本、台湾、中国の東アジアの国際関係がどのように展開していくのか。統一地方選と住民投票で台湾が下す選択に注意が必要だ。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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