そもそも、日本の医療制度では、医療行為それぞれに診療報酬点数が決められています。医療機関は医療行為に応じた点数から計算された医療費を受け取り、そのうち自己負担分を患者が、残りを医療保険者(健康保険組合など)が負担します。診察や検査、治療など、医療行為を多く行えば、その分医療費が高くなる仕組みです。
診療報酬点数は、主に厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)で決まります。妊婦加算に関する中医協の議論を振り返ると、妊婦の外来受診に対しては、①胎児への影響に留意した医薬品の処方、②妊婦に頻度が高い合併症や診断の難しい疾患を念頭に置いた診察、③妊婦のメンタルヘルスケアの充実、などに重点が置かれていることがわかります。
実感がないので、わかりにくい
あまりピンと来ないかもしれませんが、普段であれば、市販薬で済ませるところを、妊娠中だから病院で相談しようと考えたことはないでしょうか。それは、まさに、普段より充実したサービスを求めていることであり、サービスを受ければ、医療費に反映されてしまうのです。
「会計時に妊婦であることがわかって、上乗せされた」「妊婦であることがわかったら、過去にさかのぼって徴収された」といった声もあるようです。特別なケアをすることによる加算なので、本来であれば診察が終わった後に判明した場合は、加算されることはありません。
また、すべての診療科で加算されるため、たとえば、コンタクトレンズを作るために眼科で視力検査をした場合にも適用されます。加算について事前の説明もなく、医者からも妊娠に関連する病気について特別なコメントがなかった事例も多いと思われます。患者がケアを受けたことを実感できなければ、この加算は患者にとってわかりにくいものとなります。
一方、薬の飲み方は、授乳期も注意が必要ですが、授乳期には加算がないほか、妊娠中に薬局で薬を処方してもらっても加算がありません。また、注意が必要なのは同じなのに、お腹が目立つようになるまで、あるいは自分で妊娠中であることを言わない限り、妊婦に対する特別なケアも受けられませんが、加算もされません。これもわかりにくい理由の1つとなっています。
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