英語発音に自信がない人に教えたいコツ3選 「外国人に通じる」ためには自信も必要だ

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英語教育の基盤のひとつである社会言語学(社会や世界での英語の使われ方を扱う言語学の一分野)には「リンガフランカ(世界共通語)としての英語」という概念があり、次のような考え方をする。

英語は非ネーティブ同士で使われることが圧倒的に多いため、目指すべきはネーティブスピーカーのような発音ではなく、互いに通じる発音である。その際には、母語の痕跡があっても構わない。

最後の点には賛否両論あるが、世界には「母語訛りは自国に対する誇りや民族的アイデンティティの表れ」と考える学習者もいる。知り合いのイギリス人英語教師に言わせると、フランス人にその傾向が強いという。そこまで大げさに考えずとも、少なくとも「カッコよさよりも通じやすさ」という発想は、英語を話す際の心理的ハードルを大いに下げてくれる。

そのような発想の転換は、特に日本人英語学習者にとって重要である。冒頭で紹介したジェンキンズ教授の調査項目には、各国の英語教師による自国民の発音評価というのがある。それによると、日本人は自己評価が低く、「本物の英語」を習得する気持ちが強いというアンケート回答者のコメントを引用している。

「通じる英語」を話すために

ここで興味深いのは、中国人の英語教師による中国語訛りの発音に対する態度である。ランキングでは日本語訛りと最下位を争っているが、自己評価は極めて高い。メンツもあるのだろうが、自尊心の表れでもある。

その一端に私も触れたことがある。中国内陸の中規模の都市(といっても人口は大阪ほどもある)で、公立の小中高の英語授業を視察したときのことである。学校数が尋常ではなく、また給料がさほど高くないためか、どこの学校にもALT(ネーティブの語学補助教員)がいなかった。

そこで先生たちに、「ネーティブ教員がいなくても英語はきちんと教えられると思うか」という質問をしたところ、「いるに越したことはないけど、自分たちで十分に教育できる」と自信たっぷりに答えていた。

教えるにせよ、学ぶにせよ、使うにせよ、自信の果たす役割は大きい。多くの日本人にとって、自信を持って「通じる英語」を話すための第一歩が、ここで説明した発音の3大ポイントである。

池田 真 上智大学教授

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いけだ まこと / Makoto Ikeda

上智大学文学部英文学科教授、文学部英文学科長。早稲田大学政治経済学部経済学科、上智大学文学部英文学科卒業。上智大学大学院文学研究科英米文学専攻(修士号・博士号)、ロンドン大学キングズカレッジ大学院英語教育・応用言語学専攻(修士号)。上智大学のほか、桐朋学園大学、京都大学大学院、早稲田大学、国際基督教大学で非常勤講師を務める。英語学(特に英文法史)と英語教育(特にCLIL=内容言語統合型学習)を専門とする。日本CLIL教育学会副会長。

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