タイミング最悪「ゴーン逮捕」にフランス動揺

日仏交流160周年の節目に起きた大事件

それだけ、ゴーンは日仏関係において重要な人物だった。彼はたったの数年間で日産を一変させたと同時に、日本におけるフランスのイメージをも一変させた。大部分の日本人にとって、ビジネス界の人々にとってさえ、フランスとは贅沢品と上質なワインのみを生産する国だった。フランスの工業の優秀さを知っている人は少なかったし、ドイツよりも下だと考えられていた。

「フランス人とは文化に関する会話をする。ドイツ人とは工業に関する会話をする」と、以前ある日本のCEOが語っていた。しかしゴーンの目覚ましい成功によって、日本の政財界はフランスには工業的側面とラクジュアリーな側面の2側面があるということを知った。「今日、従業員数という観点で言えば、日本で最大のフランス企業はおそらくLVMHジャパンと公共事業企業のヴェオリアだろう」と、日本で働くフランス企業のある幹部は説明する。

いつの間にか馬が騎手になっていた

フランスでは、ゴーン逮捕のニュースが流れ始めた頃、人々は仕事に向かっていた。が、前出のアニエス・パニエ=リュナシェ経済・財務副大臣同様、政府関係者もルノー関係者も、誰もが「何も言えない」状態だった。ルノーはこの日、「ルノーの会長兼CEOのカルロス・ゴーンからの詳細な情報を待つが、取締役会は連合会社におけるルノーの利益保護のために尽力したい。ルノーの取締役会をなるべく早く開く」とするプレスリリースを発表するのがやっとだった。

エマニュエル・マクロン大統領も「事実に関する補足的な情報を持ち合わせていないので、その真相や具体的状況について意見を述べるのは時期尚早。株主である国は、連合の安定、グループ、グループの全従業員のために必要な安定を極めて注意深く見守っていく。株主である国はグループ従業員に対し、まさに全面的な支援を保証すると申し上げたい」とコメントするにとどまった。

多くのフランス人は、ゴーンは日本では「半ば神」と考えられていると信じている。日産を立て直した偉大なるカリスマ経営者だと。が、話は少しずつ変わってきていた。ルノーによると、2017年の利益の54%は日産によるものだった(27億7100万ユーロ)。前年(17億4100万ドル)は、49%だったことを考えると、貢献度は増している。

19年前、ルノーは日産を救ったが、今では日産がルノーには欠かせない存在となっている。馬と騎手に例えるなら、ルノーにとって馬だった日産がいつのまにか騎手になっていて、ルノーが馬になったようなものだ。

それでも、国を超えた大型連携がことごとく失敗している自動車関係において、日産・ルノーの奇妙な関係が続いているのは、ゴーンの手腕があったからにほかならない。しかし、ここから先、同じストーリーが続くかどうかは極めて微妙になってきた。

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