篠原涼子が第一線で走り続けてこられた理由

「まだ自分を女優だと感じられない」と語る

これまでのことを振り返っても、自分の意志で道を切り拓いてきたというよりは、周りの皆さんがいろいろ『やってみたら?』と声を掛けてくださるものに、一つ一つ応えていくうちに、ここまで来たという感じなんです」

(撮影/竹井俊晴)

篠原さんが自分のことを「女優だと感じられない」と言うのも、もともとは歌手に憧れてこの世界に入ったから。お芝居は、初めはやりたいことではなかった。

だが、ヒットメーカー・小室哲哉さんのプロデュースを離れて以降、なかなかヒット曲に恵まれず、「たまたまお話をいただいた」ことから女優業へ。さまざまな出会いと経験を積み重ねていくうちに、演じる楽しさに夢中になった。

篠原さんのすごいところは、そうやって本意ではなかった場所に身を置いても、決して投げ出さなかったこと。ビジネスの世界でも、意に沿わない異動や職務変更はよくある話。

そんなとき、つい「私の本当にやりたい仕事はこれじゃないのに」と投げやりになってしまう人も少なくない。けれど、篠原さんは与えられた場所で自分にできることをやってみよう、と決めた。だから、今がある。

「私が演じる上で大切にしていることは、とにかくいただいた役をまっとうしようという気持ち。そのためには、まず自分が役を愛することから始めます。どう面白くしよう、どうカッコよくしよう、どう可愛くしよう、というのはすごく考えますね。私が役を愛することで、見ている人に応援してもらえたり、愛してもらえたりする役ができていくと思うんです」

自分の力で満足させる作品にしていきたい

「女優だと感じていない」と言いながらも、そうやってお芝居について語る声は、真剣な熱がこもっている。「やりたいことじゃなかった」はずの演じることが、いつしか篠原さんの居場所を築き上げた。そして今、女優という仕事に対する想いも、また少しずつ変わり始めている。

(撮影/竹井俊晴)

「昔は、お客さまに感動してもらえる作品をつくることが自分の役目だと思っていて。でもある時、知り合いの監督とゴハンに行って、そこでそういう話をしたら、彼女から言われたんです、『それは違うよ』って」

その監督は、続けてこう言った――まずは自分のためじゃないと、観ている人にも伝わらないから、と。

「なるほどなって目からウロコだったんです。自分が満足しなくちゃダメだって分かってはいたんですけど、そういう気持ち忘れていたなって改めて気付かされたというか。だから今は、自分が満足できる作品を届けたい、という気持ちが一番。そういう意味では、この『人魚の眠る家』は私の代表作になったと思います」

「女優だと感じていない」と控えめな自己評価をした篠原さんが、静かにそう自信を込めた。

「そして、これからもそんな満足できる作品に出会うんじゃなくて、“自分から満足できるように”していきたい。満足するものを与えられるんじゃなくて、自分で満足させていける。そういう力を持ちたいですね」

どれだけキャリアを積んでも、篠原さんの向上心は尽きない。どこまでも努力の人だ。女優願望のなかった彼女をここまで導いてきたのが運ならば、その運をただのラッキーで終わらせなかったのは、やっぱり努力だと思う。夢見た場所と違っても、諦めずに努力を重ねたから、神様がまた新しい運をプレゼントしてくれた。“努力は2番目”と語るその言葉に、篠原さんが第一線で走り続けてこられた理由を見た気がした。

(取材・文/横川良明 撮影/竹井俊晴)

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