悩めるガリバー・野村証券に「生みの苦しみ」

大幅減益でも「売上目標なし営業職」を拡大

金融ジェロントロジーとは、認知機能の低下など老齢期や老齢化のプロセスを研究する老年学と金融研究を組み合わせたものだ。野村資本市場研究所の野村亜紀子研究部長は「金融行動ではいろいろと考える必要があり、認知機能の衰えにより制約が早めに来てしまう。本人の意思を生かし、有効な資産管理を支援すべく学際的な取り組みが求められる」と語る。

年を取れば誰でも記憶力は衰える。どの時点で、どのような金融取引や意思決定を避けるべきなのか、本人に自覚症状はない場合、他者はどう気付くべきなのか。明確に線を引きにくい問題であり厄介だが、「きちんと金融老齢学を学んでおけば、対応は全然変わってくる」と野村研究部長は語る。

野村ホールディングスは、慶応義塾大学の医学部や経済学部の教授を講師としたハートフルパートナー向け研修会を定期的に実施。出席した梅津さんも「お客様のちょっとした言動が、いまこの段階にあるのかもしれないという判断材料になる」と話す。

認知症患者の資産額は215兆円に

日本経済全体の視点で考えても、こうした取り組みは必要不可欠になってきそうだ。第一生命経済研究所の推計によれば、認知症患者の保有する金融資産額は2015年に127兆円(全体の7.2%)、2030年には215兆円(同10.4%)に達する。

高齢化の進行を放っておけば、金融資産の枯渇やそれに伴う貧困などの問題が起きかねない。金融ジェロントロジーの推進役である野村証券の山賀賢司営業企画部長は「われわれが国民の金融資産を支えていくという自負で取り組んでいる」と語る。

金融ジェロントロジー研修会の席上、リテール改革を指揮する野村證券の森田敏夫社長は「家族との連携は難しいが、それを乗り越えて家族ぐるみで付き合えるような関係を作ってほしい。人間力の勝負だ」と、集まったハートフルパートナーに語り掛けた。野村證券の「生みの苦しみ」は始まったばかりだ。

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