政治家の「失言の歴史」にも時代が表れている

確信犯的なものから軽薄なだけの発言まで

このほか第1次安倍内閣では、事務所費問題を追及されていた松岡利勝農水相が政治資金の使途を聞かれて答弁に窮し、「光熱水費には、何とか還元水とか、そういったようなものに使っています」と答弁した。「何とか還元水」は一時、流行語にもなった。一方、松岡氏はその後、議員宿舎で自殺した。

また久間章生防衛庁長官も講演で「原爆が落とされて長崎は本当に無数の人が悲惨な目に遭ったが、あれで戦争が終わったんだという、頭の整理で今、しょうがないなというふうに思っている」と発言し、やはり辞任した。

これらに共通しているのは、ごく普通の一般市民でも発言しないであろう非常識な内容という点である。

では失言の質の変化は国会議員の質が低下していることを示しているのだろうか。必ずしもそうではないだろう。昔も今も不勉強で非常識な議員はいた。

しかし、冷戦時代の自民党と社会党など野党は、憲法改正や自衛隊などイデオロギー的な問題が戦闘正面だった。これらについて閣僚の発言に問題があると失言として取り上げ、政治的対決の材料としていた。

一方、政策に関する専門的な質問は、かつては閣僚に代わって各省幹部が政府委員として答弁していた。予算委員会では首相とともに外務省や大蔵省、防衛庁の局長が頻繁に答弁に立っていた。当然、失言は出てこないから、伴食大臣といえども揚げ足は取られないで済んだ。

ところが1990年代に政治主導が叫ばれると、国会審議での答弁も閣僚ら政治家が行うべきであるとして政府委員が廃止された。官僚が閣僚に代わって答弁したり、それを補うことが難しくなったため、小泉純一郎首相は能力のある政治家を一本釣りする組閣を行って話題になった。

秦野章氏の政治家の本質を言い当てた発言

以後の首相も答弁能力のある議員を優先して閣僚に起用し、長く使うようになった。そうなると自民党内に当選回数を重ねたにもかかわらず入閣できない議員が増えていく。その数は数十人に上るといわれる。

彼らの不満は募り、放っておくと政権批判につながりかねない。安倍首相の今回の内閣改造は未入閣者を多く起用した点に特徴がある。つまり「図らずも任命された」大臣の復活だ。当然、まともに国会答弁できるのかというリスクを伴う。桜田氏の失言はその一端であり、後に続く閣僚が出ないとは言い切れないだろう。

最後にもう1つ、「失言」を紹介する。1983年10月、田中角栄元首相がロッキード事件で逮捕され一審で有罪判決が出た後、田中氏を擁護する立場の秦野章法相が雑誌のインタビューに答えた発言だ。

「政治家に古典道徳の正直や清潔などの徳目を求めるのは、八百屋で魚をくれというのに等しい」

まったくの開き直りだが、政治家の本質をついているようで、思わずニヤリとしてしまう。

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