外国人も日本人も困る医療現場の深刻な実態 日本は外国人労働者を受け入れても大丈夫か

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また、拠点病院の役割として周囲の病院への支援を掲げているが、実際はどの程度行われているか、つまり配置された医療通訳者が周囲の病院に派遣されることがあるのだろうか。

オーストラリアのニューサウスウェールズ州では、拠点病院に地区医療通訳サービス事務所があり、そこから拠点病院と地区内の一般病院に医療通訳者が無料で派遣されるシステムになっている。こうした事務所機能があれば、拠点病院形式も機能するのだろうが、残念ながら日本の拠点病院には整備されていない。

3つ目は、取り扱い言語の片寄りである。外国人患者受け入れ体制を整備したという医療機関の多くが、その目的を訪日外国人のメディカルツーリズム(医療観光)に置いているため、英語と中国語が多くなっている。必ずしも立地する地域に住む外国人に適合する言語ではない場合がある。

厚生労働省の取り組みについては、初めて医療通訳に国の予算が付いた点で、筆者は画期的だと評価している。それだけに、15年以上の実績とノウハウを有する地域の医療通訳システムを活用しないのはもったいない。地域にとっても国との連携はメリットが大きい。

最大の課題となっている「医療機関の理解と協力」について、厚生労働省が局長通知を1つ出すだけで、事態は改善する可能性があるからである。

本来あるべき医療通訳システムは――(1)地域に在住する外国人患者に対応し、通訳人材の多寡や必要とされる言語数、交通機関・地理的事情など、地域毎の状況をきちんと反映した形であること、(2)的確なカリキュラムとテキスト、講師によるトレーニングが用意され、修了試験に合格した通訳者が派遣されるものであること、(3)医療機関の協力のもとに運用され、そのために通訳財源を含めて国と地域が協力していること――などが要素として挙げられる。今後の厚生労働省の方向転換に期待したい。

来るのは労働力ではなく人間

そもそも、多様性とは何だろうか。本来は人材の有用性やメリットの有無を軸に語るべきものではないと思う。金子みすゞが唱うように「みんなちがって、みんないい」わけであるし、人は一人ひとり、みな違うから「自分」を認識できるのであり、だから人間は多様性を否定することはできないものだと思う。

外国人、障害者、LGBTなどを排除しない多様性に富んだ社会になるよう、メディアは不正を報道するだけでなく、社会に何ができるのかを考える材料を提供するべきだろう。

戦後スイスを代表する作家、マックス・フリッシュが言うように、やって来るのは労働力ではなく人間なのである。多様性を尊重する受け入れ体制を整えたいものである。少なくとも医療の世界においては。

西村 明夫 RASCコミュニティ通訳支援センター(Cots)代表

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にしむら あきお / Akio Nishimura

埼玉大学教養学部国際関係論課程卒、法政大学大学院政策科学研究科修士課程修了。神奈川県、医療関係団体、認定NPO法人「多言語社会リソースかながわ(MICかながわ)」との協働で、医療通訳派遣システムを構築(2002年)。一般財団法人自治体国際化協会の医療通訳ボランティア研修プログラムの開発に従事。移民政策学会理事。著作に『外国人診療ガイド』(メジカルビュー社)、『医療通訳士という仕事』第1部「医療通訳士に求められる共通基準」(大阪大学出版会)があるほか、『医療通訳学習テキスト』(創英社/三省堂書店)では共同執筆・編集責任を務めた。

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