ごみ収集の現場は「ティール組織そのもの」だ 清掃車に乗って考えた地方自治
企業の人事担当者に提案したいのだが、今後、研修のひとつに、ごみ収集体験を取り入れてみてはいかがだろうか。というのも、本書で描かれるごみ収集の現場は、いま話題の「ティール組織」そのものなのだ。清掃員ひとりひとりが現場で高度な判断を行い、しかも自発的に協力しあっている。
たとえば清掃員は、工場の特性まで考えながらごみを収集しているという。本書で初めて知ったのだが、清掃工場の焼却プラントは、敷地の形や広さによって、工場ごとに異なるメーカーの設備が採用されているそうだ。工場によっては、木の板や段ボールがまぎれこんでいただけで、ごみを投入する装置が停止してしまうところもあるという。焼却炉停止に及べば復旧まで数日を要する。清掃員は現場で「なにを収集してはいけないか」を判断しながら仕事をしているのだ。
自発的に行動する力を養える仕事
清掃センターに戻った後も、自分の持ち場が片付くと、職員は自発的に他の人の分別作業などを手伝うという。自ら考えて動くからこそ、現場が回っているのだ。会議室での研修よりも、こうした現場を踏むほうがよっぽど得るものが多いと思う。
最後に、本書を読んで個人的に新しく始めたことを挙げておこう。ある作業員は、住民から「ご苦労様」と言ってもらえるだけで、やりがいを感じると述べている。ごみ収集の仕事は、肉体労働であると同時に、過酷な感情労働でもある。「ありがとう」のひとことで彼らのモチベーションが上がるのならそんなのお安い御用だ。いくらでもお礼を言おうではないか。
こんど清掃作業員を見かけたら、ぜひあなたも声をかけてあげてほしい。笑顔で応える彼らをみて、きっと晴れやかな気持ちになるはずだ。
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