中国メディアも熱狂した「本気のソニー」 巻き返しを図るソニーに勝算はあるのか

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若者をターゲットに、ソニーブランド体験を提供

プレゼンテーションは平井社長のスピーチを挟んで、ソニーチャイナ栗田社長が2度登壇して行われました。その後、隣接の商品展示エリアへ移ってメディア取材が行われました。全体を通して目についたのは、以下のような特徴であり、そこからソニーの対中国市場戦略が見えてきた気がしました。

① 製品PRでなく、ブランド価値観の共有の場

今回のイベント全体を通して、製品単位のマーケティングコミュニケーションでは伝わらない、ソニーブランドが包括する大きな価値観を伝えたいという明確な意図が見えました。プレゼンテーションと商品展示を通して、「ハードとソフトを統合したユニークなユーザー体験を提供する」というソニーのビジョンが表現されていました。

また、中国で長年行ってきたCSR活動、たとえば、北京にある子供向けの科学館「Sony ExploraScience」で、音や光の原理を体験型の展示や実験ショーなどを通して累計160万人の子供たちを啓蒙してきたことなどを紹介していました。メディアの日本企業を見る目を少しは変えたのではないかと思います。

② 中国市場へのコミット

また、平井社長のプレゼンで強調されたのが、アメリカ、日本、中国がソニーの3大市場であり、中でも中国が最も潜在成長力が高い重要市場であるということです。その説明の際に使われたスライドには、日米中を表す3つの円が描かれ、さらに中国市場を示す最も大きな赤い円から右肩上がりの矢印が描かれていました。こうした、ややあからさまではありますが、単純なスタイルで中国市場重視の宣言をすることが、中国メディアに好まれることをよく知っていての演出です。

③ 若者向け商品へのフォーカス

大型ディスプレーに映し出される映像をバックに、若いパフォーマーたちによってステージ上で繰り広げられたショーでは、「首掛け式ウォークマンを身に付けてマウンテンバイクで走り回る若者」「犬の背中にアクションカムを装着して撮影する女性」「女の子が歌う姿をミュージックカムで撮影する父親」「イギリスの大学で卒業式を迎え、その感激をタブレットやスマホで中国の両親に伝える女子学生」などが演じられました。アクティブな若者のライフスタイルを意識した演出・構成です。

配布されたプレスキットに入っている商品カタログも、リニアPCMレコーダー、Xperia Z1、ミュージックビデオレコーダー、アクションカム、レンズスタイルカメラ、ハイレゾ・ヘッドフォン、ヘッドマウントディスプレイの7種で、テレビやデジカメを外して、あえて新ジャンルや新技術搭載のパーソナルエンターテインメント機器に特化することで、ソニーブランドの独自性をアピールする意図が見えてきます。

逆に、テレビやPCといった従来の花形商品の紹介は控えめでした。4K関連の商品に関しても、スポットライトを浴びたのは張芸謀(チャン・イーモウ)監督で撮影進行中の4A映画『帰来』のプロジェクトでした。

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