マツダ「CX-8」発売1年、掛け値なしの通信簿 3列シートSUVは市場にどう受け入れられたか

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しかしその当初は、バブル経済へ向け国内が好景気に浮かれた様相であったので、多目的にクルマを使えることの意味や価値があまり理解されなかった。そしてバブルがはじけて以降、オデッセイをはじめとする、手ごろに買えて多目的に使えるミニバンブームが起こるのである。

マツダには、MPVのほかにやや小型の「プレマシー」、より室内空間を大きくとった「ボンゴフレンディ」やその後継の「ビアンテ」というミニバンがあった。それらはみな3列シートで、多用途で使えるクルマとして愛好してきた顧客があったはずだ。しかし、新世代商品群にミニバンは含まれず、MPVもモデルチェンジをすることなく2016年に販売を終了すると、マツダから3列シートの商品がなくなったのである。そこに、CX‐8が登場する。

「CX‐8」はミニバンの代役となるのか?

だが、ミニバンとSUVでは、クルマの成り立ちがまったく異なる。外観はもちろんだが、もっとも顕著なのは最低地上高、すなわち地面と車両の床の間の高さである。SUVは、本格的4輪駆動車ほど悪路走破性を求められていないが、それでも未舗装路を走行することも視野に最低地上高が確保されているため、床と地面との間の隙間が大きい。したがって、乗り降りは決して楽ではない。ことに、高齢者にとってこの点は大きい。

マツダ「CX‐8」のシート部。3列目の床が高く、高齢者は乗り降りがやや困難か(撮影:尾形 文繁)

63歳の私自身も、SUVの新車試乗のたびに乗り降りに苦労している。まして、3列目の座席に乗り込むには腰をかがめ、頭を下げて室内奥へ向かわなければならない。その姿勢は、高齢者には厳しい。

その視点からすると、CX‐8はミニバンを愛用してきた顧客の代替にはならないのである。また、過疎地域における地元住民による交通手段の車両には適さない。

マツダのみならず、米国市場に依存する自動車メーカーは多い。しかし、いずれ、高齢化社会で世界の先頭に立つ日本において、SUV人気は影を落とす可能性がある。そして軽自動車や小型車人気をさらに拡大させかねないのではないか。

SUV人気に下支えされているいまはいいが、それがいつまで続くことか。マツダのこの先の商品群の在り方も、やがて一つの転換期を迎えるかもしれない。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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