米国流「勝ち続ける」ための考え方

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プロゴルファー/小林浩美

 先の米国の選挙でオバマ氏が次期大統領に決まった。私が米ツアーを13年間転戦している間にも4回選挙を見ることができた。そんな年は試合中、選手ラウンジでは必ず話題となった。誰々候補はこんな考えだとか、民主党と共和党の政策を比較してどこがいいとかそうでないとか。日本とは違う直接選挙だからかと思うが、身近なこととして普通に話していることに驚いた。また、大統領候補が誰にでもわかりやすい言葉で話しているのにも感心した。

さて、今日は考え方の違いについてのお話。スコアを作るにあたって、アプローチ・パッティングの比重は大きい。特に優勝争いをしている場面ではてきめんに差が出る。そこで、プロはアプローチの引き出しがたくさん必要である。なぜか? 試合でのピンの位置は厳しい位置に立っていることが多い。そこに対して、積極果敢に攻めていく。うまくいけばバーディとなるが、グリーンを外した場合には、難しいアプローチが残ってしまうのが常である。でも、そこからでもなお、パーやバーディを獲っていきたい。もちろんボギーでも仕方がない場合もある。しかし、いつも仕方がないというのではスコアを縮められないし、厳しい競争の戦いでは優勝は望めない。また、ピンに対して安全に攻めてばかりいては、バーディを獲る数が限られてしまい勝てない。だから、状況に応じた、いろいろな打ち方が必要になってくるのである。

米国で教わった攻め方は、ショットでもアプローチでもパットでもどんなところからでもカップを狙え、というものだった。当時日本では、カップ周りにできる限り寄せていく、という考え方が主流だった。状況によりけりとはいえ、基本ラインを「狙う」というものと「寄せる」というものでは、明らかに結果の出方が違う。当然、打つときの「狙い方」も「集中力」も違ってくる。マスターズのような極めて厳しい状況でも、タイガー・ウッズがグリーン周りやどこからでもカップに入れてくる、あのアプローチを見るとよくわかる。

優勝争いの仕方も米国はひときわ厳しい。日本の場合、5ホール残した状況で勝利の行方が見えたら、あとは堅く戦っていくパターンがよく見受けられる。他方、米国の場合、容赦ない。勝ちが見えたからといって、手は緩めない。さらに、バーディを仕掛けて相手をたたきつぶす。出せるスコアに限界を作らないともいえる。たたいたあと、上から足で踏んづけて、地面に食い込ませるくらい相手にダメージを与える。なぜなら次回戦うとき、この人は手強いと思わせて、萎縮させるためだ。
米ツアーを戦ってきて、同じ土俵で戦うには、考え方や攻め方といったボトムラインを同じにしておくことで、優勝がやってくると実感した。

プロゴルファー/小林浩美(こばやし・ひろみ)
1963年福島県生まれ。89年にプロ初優勝と年間6勝を挙げ、90年から米ツアーに参戦、4勝を挙げる。欧州ツアー1勝を含め通算15勝。現在、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)理事。TV解説やコースセッティングなど、幅広く活躍中。所属/日立グループ。
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