伊藤忠・岡藤会長が説く商社パーソンの心得 一芸に秀でつつも変化に対応できる人材求む

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――三菱商事、伊藤忠の商社「新2強時代」の到来を声高に宣言されていた時期もありましたが、最近は「健康経営」を前面に打ち出しています。なぜですか。

伊藤忠は業界順位(純利益ベース)で2015年度に1位になった。そのときにね、自分自身の反省やけども、利益至上主義になると社員も生活とかそういうものが犠牲になると悟った。結局、会社のイメージとか評判を落とすことになる。そこで、「うちの誰それが伊藤忠に入ったよ」って親や親戚が誇りを持って話せる、そういう会社にしようと思った。

そのための取り組みの一つが働き方改革。仕方なく残業がある場合は、夜遅くまでやるのでなく朝来てやれというように変えた。生活費に影響が出ないように、朝5時~8時までの勤務は深夜勤務と同じ5割の割増賃金にした。

おっさんがね、仕事を終えていても会社に残っていた。そういうことをしているから、たまに家に早く帰ったら、「こんな時間に帰られてもご飯なんかありませんよ」って言われる。それで夜9時ごろに若い社員に「ちょっと飯行こか」って誘う。若い社員はかなわんで。それを変えたんや。

昨年からはがんと仕事の両立支援を始めた。40歳以上の社員は全員、5年ごとにがん検診を無償で受けられるようにし、高度先進医療費も会社が負担するようにした。「ちょっと治療に行ってくるわ」と平気で言えて、今日は早く退勤することができる環境にしようと。

あと残っている中で、いちばんの問題は喫煙なんだよな。喫煙については何も言わず、がんになったら会社が面倒みますというのでは、「対外的に説明できへんやろ」と社外役員からも指摘されている。でもね、会議でこういう話をすると黙って下向くやつおる。それ、たばこ吸うやつ(笑)。

ただ全館禁煙にしても、どこかで吸いよるわな。イライラしてパワハラするかもわからんし。だから、たばこをやめるためのサポートをしてやらないと。

急に「明日からダメや」と言うたら、勤労意欲を削ぐ。タバコは健康に悪いということで、会社がおカネを出してやめさせるようにせなあかんな。

社長は割に合わない、副社長を目指せ!?

――最後に、総合商社に入社して社長を目指したいという学生に一言。

結論から言うとな、副社長を目指せと。責任は社長の10分の1以下やからな。これは絶対楽や。社長は割に合わんぞ(笑)。

だけど、そういう考えやったらあかんわ。目の前に目標を定めてな、その商売を一生懸命やっていくことで道が開かれるから。僕なんか社長になりたいとか、そんなこと考えたことないわ。

『週刊東洋経済』11月17日号(11月12日発売)の特集は「進撃の商社」です。週刊東洋経済プラスに5大商社社長インタビューの詳細版を近日公開予定
緒方 欽一 東洋経済 記者

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おがた きんいち / Kinichi Ogata

「東洋経済ニュース編集部」の編集者兼記者。消費者金融業界の業界紙、『週刊エコノミスト』編集部を経て現職。「危ない金融商品」や「危うい投資」といったテーマを継続的に取材。好物はお好み焼きと丸ぼうろとなし。

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