「時給400円」で働かされていた外国人の悲惨 そもそも技能実習制度の役割はいったい何か

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このように、技能実習生を受け入れる事業主には、業種にかかわらず労働基準法の順守が求められるわけですが、今回の事件においては、法廷での下記のような質疑応答を踏まえても、被告農家には順法意識がほとんどなかったようです。

被告の農家は法廷で、原告側代理人の「賃金台帳を作っていたか」という質問に、「賃金台帳とはどういう感じのものか」と聞き返す場面があった。実習生の受け入れ窓口で、実習が適切に行われているか監査する監理団体に台帳の作成を頼んだかどうかも「わからない」と証言していた(『朝日新聞デジタル』2018年11月10日)。

このやり取りの中に含まれる「賃金台帳」とは、事業主がどのような計算根拠に基づき、いつ、いくらの金額を労働者に支払ったのかを記録する帳簿で、労働基準法上は「労働者名簿」「出勤簿」と合わせて「法定3帳簿」と呼ばれる最も重要な帳簿の1つです。

農家側の主張はかなり無理がある

これほど重要な帳簿である「賃金台帳」について、「賃金台帳とは何か?」と聞き返す農家に対し、水戸地裁は事業主としての順法意識の低さを問題視して、付加金を課す根拠の1つにしたのではないかと考えられます。

第2は、正規の就業時間外の業務について、「技能実習生と請負契約を結んでいた」という農家側の弁明に明らかに無理があるということです。

この点、さらに細かく見ていくと2つの問題点があります。問題点の1つ目は、農家が出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)を理解していなかったということです。技能実習生のビザは、入管法に基づいて「技能実習」というカテゴリーで発行されます。技能実習ビザで入国が認められた外国人に就労が認められるのは、実習計画に基づいた範囲で、雇用契約に基づいた就労に限られます。

ですから、雇用契約であれ、請負契約であれ副業を行ってはならないことはもちろんのこと、たとえ技能実習受入先の事業主であったとしても、雇用契約とは別に請負契約を結んで別段の業務をさせることは入管法違反です。

問題点の2つ目は、入管法違反の問題を横に置いておくとしても、働かせ方の実態が請負契約ではなく雇用契約であったということです。

請負契約は、対等な事業主同士の立場で、諾否や条件交渉の自由があってはじめて成り立つものです。今回の事件においては、下記の報道のように、農家側が優越的立場をもって技能実習生に作業をさせていたと水戸地裁は認定し、実態は雇用契約である偽装請負だと判断したわけです。

判決は、①大量の大葉を出荷する必要がある②実習生が作業をするのは午後5時以降で、作業には数時間かかる③すべての大葉を巻く作業を実習生がしており、実習生が自分たちで作業するものだと考えていても不自然ではない――などとして、「諾否の自由は事実上制限されていた」と認定。労働契約による作業であるとした(『朝日新聞デジタル』2018年11月10日)。

このように、入管法違反かつ、偽装請負であったということにも、水戸地裁は悪質性を認めたのでしょう。

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