電気を捨てる「ムダ発電」はこれで根絶できる 九州「太陽光発電の停止」はもったいない

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実証の目的は2つある。

1つは、太陽光発電の出力変動を平準化すること。太陽光発電の余剰電力で水を電気分解し、発生した水素を貯蔵しておき、必要に応じて燃料電池で再発電する仕組みだ。電気2重層キャパシタも使い、大容量で長期貯蔵できる水素と、高効率で即応性に優れるキャパシタの組み合わせで、再エネ発電の出力変動に対応した効率的な運営を目指す。

2つ目は、災害時のバックアップ電源だ。通常、浄水場などの重要施設には非常用自家発電設備が備えられているが、容量不足や、災害時には燃料の調達が困難などの理由から、信頼性は十分とは言えない。東日本大震災の際は、場所によっては4日間も停電した。このシステムでは、停電時でも発電できる太陽光発電と、水素貯蔵を組み合わせることにより、長期の停電にも耐えうる体制構築を目指す。

「出力制御」を繰り返さないための切り札

再生可能エネルギー発電の系統接続で問題となるのが出力の不安定性だ。大量の不安定電力が系統に流れ込むと、系統全体の周波数が乱れることや、最悪の場合停電を引き起こす可能性もある。

先月、九州電力が太陽光発電事業者に対し、一時的な稼働停止を求める「出力制御」を実施したことは記憶に新しい。

風力発電についても、北海道電力や東北電力管内では、需要量や需給調節力から算定された接続可能量の上限に近づいており、新たな導入余地が少なくなっている。

だが、出力不安定な再エネ発電を安定電源に変えることができれば、系統接続の最大のバリアーが取り除かれ、再エネ導入を大幅に拡大することができる。

そして、これを可能にする技術として期待されるのがP2Gだ。その実用化に向けて、実証プロジェクトの果たす役割は大きい。

西脇 文男 武蔵野大学客員教授

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にしわき ふみお / Fumio Nishiwaki

環境エコノミスト。東京大学経済学部卒業。日本興業銀行取締役、興銀リース副社長、DOWAホールディングス常勤監査役を歴任。2013年9月より武蔵野大学客員教授。著書に『再生可能エネルギーがわかる』『レアメタル・レアアースがわかる』(ともに日経文庫)などがあるほか、訳書に『Fedウォッチング――米国金融政策の読み方』(デビッド・M・ジョーンズ著、日本経済新聞社)がある。

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