東芝、「Nextプラン」に見る経営と現場の距離 2つのリスク案件を処理も、何かが足りない

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米国での原発建設事業の損失が膨れあがったのは、2015年末、建設会社CB&Iストーン・アンド・ウェブスター社(S&W)を東芝の米原発子会社ウエスチングハウスが1ドルで買収したことによる。

当時、すでに工事は大幅に遅延して超過コストの分担で訴訟沙汰になっていた。S&W買収は東芝グループが超過費用を丸抱えすることを意味していた。そのリスクを東芝経営陣がどこまで把握していたのか。1ドルという安値の買収だったため、ビジネスリスク検討会でも対象にもならなかった。

フリーポートも同様だ。同契約は、佐々木則夫社長時代に進められた(契約時、佐々木氏は副会長)。燃料となるLNGをセット販売することで火力発電事業を後押しすると説明されてきたが、アメリカで東芝が進めていた原発新設計画の支援が目的だったことは関係者の多くが認めている。

原子力事業をやり玉に挙げたいわけではない。問題なのは、フリーポートでは契約時点で巨額な支出がなかったからか、そのリスクが議論された様子がないことだ。

過去の失敗から真摯に学ぶべき

東芝は不正会計を契機に内部管理体制を強化してきた。中でもリスク管理の徹底を声高に謳っている。車谷会長も「一定のクライテリア(基準)で、少しでも懸念のあるものは本社決済。場合によっては私が直接見る」と言うが、金額が低いにもかかわらず巨額リスクをはらんだ案件をチェックできるのか。

Nextプランの発表は東京・六本木の高級ホテルで行われた(撮影:尾形文繁)

理解できないのは、東芝が過去の失敗から真摯に学ぼうとしていないことだ。過去に綱川智社長は、S&W買収の判断に問題があったことを認め、なぜそうなったのかを検証し、結果を精査して公表するとしていた。

だが、この問いに対して、綱川社長も車谷会長も何も答えていない。それは、フリーポートを手仕舞いしたこのタイミングでも変わらなかった(綱川社長は今回のNextプランの発表に姿すら見せなかった)。

Nextプランに魂を入れるには現場の協力は不可欠だが、巨額損失の責任を取らず、希望退職や経費削減など痛みを押しつける経営陣に対する従業員の視線は冷たい。何かが足りないーー。そう感じるのは、経営陣のこうした姿勢にあるのではないだろうか。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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