東芝、「Nextプラン」に見る経営と現場の距離 2つのリスク案件を処理も、何かが足りない
東芝にはこうした高い目標を出さざるを得ない事情がある。昨年12月の第三者割当増資を引き受けた投資ファンドの圧力があるからだ。すでに株式を売却しているファンドもあるが、一部は持ち株を買い増している。
今回、東芝は従前から公表していた7000億円規模の自社株買いを正式に決定した。「自社株買いでファンドに出て行ってもらう必要がある」。ある東芝幹部は真顔で話す。
2つのリスク案件を処理
今回の発表には評価できる点もある。液化天然ガス(LNG)の引き取り契約「フリーポート」と、英国での原子力発電所新設計画「ニュージェネレーション(ニュージェン)」という2つのリスク案件の処理を決めたことだ。
フリーポートは20年間のLNG引き取り契約で、最悪約1兆円の損失リスクがあると問題視されていた案件だ。これを中国企業に譲渡する。譲渡といってもおカネをもらうのではなく、東芝が930億円を支払って引き取ってもらう。
ニュージェンはすでに撤退を表明して売却先を探していたが、まとまらなかったために計画を担っていたイギリスの子会社を解散する。解散による直接損失は150億円(過去の計上分と合わせると少なくとも600億円の累積損失)となる。
フリーポートの930億円とニュージェンの150億円の損失計上を主因として、2018年度の業績予想は下方修正となった。その代償は小さくないが、「本業ではない」(車谷会長)LNG取引や撤退した海外原発による追加リスクを遮断できる。これで東芝が抱えている大きなリスクはほぼなくなった。あとは事業そのものに集中するだけである。
ただ、これで東芝の経営が健全性を取り戻したとは到底言えない。思い出して欲しい。東芝を倒産寸前まで追い込んだのはずさんなリスク管理体制だったからだ。
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