朝日新聞が進めるデジタルファーストの要諦 ウェブの台頭で報道の現場はどう変わったか
また、その日のニュースをその日のうちに届けるために、これまで15時半から行われるのが通例だった朝刊のためのデスク会を、1時間繰り上げて14時半からとしたのも、デジタルファーストへの備えの1つ。
迅速な意思決定のため、午前中と夜のデスク会は椅子に座らず、立ったまま行うのも大きな特徴です。まるで立ち話のようなスタイルで、15分を目安にミーティングを手短に進めています。
朝日新聞デジタルの“今”を示す、アクセス解析ツール
一方、今どのような記事を読者が求め、どのような記事が読まれているのかを的確に把握することも、デジタルメディアにとって欠かせません。そこで朝日新聞では、社内利用のために「Hotaru」と名付けられた独自のデジタル指標分析ツールを導入しています。Hotaruは今年度の新聞協会賞(技術部門)の受賞が決まりました。
「『Hotaru』は直近の全体PVや注目ワード、PV上位記事などをまとめたツールです。創刊から140年、ずっと紙のノウハウを積み重ねてきた会社ですから、デジタルに苦手意識を持つ人も少なくありません。そこで、どこからアクセスの流入があり、どのようなトレンドが生まれているのか、朝日新聞デジタルの“今”を示すデータが直感的に理解できるよう、フォント1つからこだわったデザインになっているのが特徴です」(編集局エンジニア・今垣真人さん)
画面を見れば、社内向けのシステムとは思えないほど洗練したインターフェースであることがわかるでしょう。編集局内ではこれを大モニターで常時掲示し、現状の共有に努めています。
「『Hotaru』では記者自身のパソコンで書いた記事がどのくらい読まれたかなどを、記事単位で見ることができます。約2300人いる編集局員それぞれが、自分が手がけた記事がどのくらい読まれたかを知ることで、今後の課題を見いだす材料にもなるでしょう。また、ウェブではどうしてもPVにばかり目が行きがちですが、CV率、つまりその記事からどのくらいの人数が有料購読に進んでもらえたかを意識する行動が社内に根付きつつあるのも、『Hotaru』の成果でしょう」