ロームが自動車業界で引っ張りだこな理由 EV時代の必需品、「SiC半導体」って何だ?

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――電力の変換や制御に用いるパワー半導体の主流は、従来シリコンでした。シリコンからSiCに置き換わることで、どのような効果が生まれるのでしょうか。

東克己/あずま・かつみ。1964年生まれ。1989年当社入社。ディスクリート生産本部長、オプト・モジュール生産本部長を経て、2018年9月より現任(記者撮影)

まずSiCを導入すると、電力損失を大幅に減らせる。電力損失が減れば、車の走行距離が伸びる。(電池とモーターの間で電力をやり取りする)インバーターの場合、当社比でシリコン製からSiCに置き換えることで、3~8%は走行距離を伸ばすことにつながる。つまり、EVやPHEVが同じ距離を走るために必要な電池の容量を小さくできる。現在、電池は非常にコストが高いため、自動車メーカーにとってのコストメリットは大きい。

サイズや重量の面でも大きく変わる。「EVのF1」と言われるフォーミュラEに出場しているあるチームが2017~2018年のシーズンで採用したインバーターの場合、シリコン製からフルSiC製に置き換えたことで、体積で43%、重量で6kg減らすことができた。車体の軽量化にもつながり、燃費は向上する。

材料メーカーまで押さえている強み

――SiCの分野におけるローム独自の強みはどこにあるのでしょうか?

2012年にパワーモジュールで世界初の量産化を行ったことが大きい。そこからは世界最先端を走り、実績を築いてきたことで、SiCの分野においてブランドを確立することができている。研究開発は、京都大学や大阪大学などさまざまな大学の先生と協力し、産・学で進めている。開発に関わった優秀な学生が、その後入社してくれるため、技術力も向上するというサイクルができている。

従来のシリコン製品(左)と比べ、電力の損失を大幅に減らすことができるSiC製品。EVの航続距離向上などに貢献が期待されている(写真:ローム)

もう1つは、材料のウエハから垂直統合で生産できる点だ。2009年にドイツのSiCウエハメーカー、サイクリスタル社を買収した。SiCは従来のシリコンと比べて、ウエハが変動費の大きな部分を占めるが、そこを上流工程から抑えられている。足元では世界的にウエハの枚数が不足しており確保が難しくなっているが、供給責任の面でもウエハ製造から自社でできるメリットは大きい。

ウエハメーカーを持つことは、品質の面でもメリットがある。SiCは何十年も製造されてきたシリコンとは違い、全く新しい製品だ。シリコンの場合は、ウエハメーカーに「一番良いウエハを持ってきてくれ」とお願いすれば問題はなかった。しかし、SiCの場合はそうはいかない。問題が発生した際に、ウエハが悪いのか、製造方法が悪いのかから見極めなければならない。まずは自分たちで全ての工程をできるようにすることで、問題を適切に把握できるようにする必要があった。

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