ロームが自動車業界で引っ張りだこな理由 EV時代の必需品、「SiC半導体」って何だ?

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――SiCの量産化に着手したのは1990年とのことですが、きっかけはなんだったのでしょうか。

京都大学の松波弘之名誉教授から話をいただいたのがきっかけだ。京都という立地も味方したのかもしれない。当時のロームは、(1W以下の電力を変換・制御する)小信号のデバイスでシェアが高かったが、そのデバイスの小型化が限界を迎えるにつれて競合の参入が増え、新たな柱が必要になっていた。1990年は、これから軸足をパワー半導体に移していかなければというタイミングだった。

生産能力がまだまだ足りない

――今後はこのSiCをどのように伸ばしていきたいと考えていますか。

現在のシェアは世界2位。競合には独インフィニオンや米クリーがいる。2025年までにSiC分野で業界トップとなる市場シェア30%を達成したい。性能面ではトップを出し続けることを目指している。現在は次世代品の開発と評価を進めている。既存製品から電力損失をさらに50%改善できる。来年下期には量産を開始予定だ。

SiCの生産を行う福岡県筑後工場では新棟(写真)を設立。 省エネルギー化のカギを握ると期待されるSiC製品の需要拡大に備える。19年着工し、20年竣工の予定(写真:ローム)

いちばんの問題はキャパ(生産能力)だ。現在SiCが使われているのは、太陽光発電用のパワコンやデータセンター向けだが、すでにキャパが足りず断るところも出てきている。今後、自動車など大きな需要増が見込まれる中、キャパアップは必須だ。2018年4月にはSiCの製造拠点であるロームアポロ筑後工場の新棟建設を発表した。2019年に着工し、2020年に竣工する予定だ。

パワー半導体全体では、インフィニオンがやはり強く、勝つことは難しい。だが、SiCでは勝つことができる。SiCで世界一をとり、ゲートドライバーやICを含めたソリューションを提案していく。そこで認知度が高まれば、パワー半導体全体まで引き合いがもらえるようになる。

『週刊東洋経済』11月10日号(11月5日発売)の特集は「クルマの新主役」です。
藤原 宏成 東洋経済 記者

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ふじわら ひろなる / Hironaru Fujiwara

1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。銀行など金融業界を担当。

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