移民拡大に潜む「健康保険制度」破壊のリスク 周辺制度設計についても丁寧な議論が必要だ

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彼らは日本で医療を受けられるのみならず、国外でも家族療養費(現金)の支給を受けることが可能だ。つまりは家族のひとりが労働者として日本で3カ月以上滞在すれば、その家族は被扶養者として高額療養費制度が適用されて高額な治療を安価に受けられるという意味だ。

そして入管法改正によって受け入れる外国人労働者の枠が拡大するため、権利者の範囲はさらに広がることにもなってしまう。

架空の親戚が出てくる余地も

しかしながら、そのすべてが真正な親族である保証はない。日本の戸籍制度のような登録制のない国も数多い。そもそも日本のような戸籍制度を持つのは台湾と韓国の2国のみで、登録制度を有している国であっても、本人の他、両親や配偶者、子供は登録するが、それ以外は記載しないところが多い。架空の親戚が出てくる余地は十分にあるのだ。

実際に「子ども手当(現在の「児童手当」)」では、制度を悪用しようとした例が存在している。2010年4月22日に韓国人男性が兵庫県尼崎市に妻の母国であるタイで養子縁組をした554人分の子ども手当(年額約8600万円)を申請したのだ。

尼崎市から照会を受けた厚生労働省が「支給対象とならない」と判断したために子供手当は認められなかったが、男性は10ページ以上のタイ政府による証明書を準備し、子供への送金証明や面会の証拠となるパスポートのコピーなど、「養親子関係の実態」を証明する書類も完備していたという。全く準備周到で、いかにも手の込んだやり方だった。

もっともこの子ども手当の事例のように、申請時にすでに給付額が明らかな場合には、不正がチェックしやすい。しかし健康保険の場合は加入時にただちに給付金額が判明するわけではないため、加入時には見破ることは難しい。そして実際に不正によって高額医療を受けようとしたときには、止めることができない状態になっている。

こうした問題を防ぐため、健康保険の加入資格者から一定の国の国外居住家族を外すという手もある。これについて菅義偉官房長官は11月2日の定例会見で、「(不正受給の可能性のある外国に在住の親族を健康保険の適用から除外することは)当然そうなる」と述べた。ところが厚生労働省は「仮定の議論には答えられない」と後ろ向きだ。

外国人の国外居住家族が無制限に健康保険の利用が認められたとすれば、国民の間で反発が強くなりかねない。というのも、来年10月から消費税率が10%に上げられて重税感が増しているが、なぜ増税をするのかといえば、増大する一方の医療福祉費を補充する財源として確保しなければならないためだ。

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