"移民"じゃないからOK?「改正入管法」の不安 労働力不足が深刻化しているのは事実だが…
安倍内閣は、外国人労働者の受け入れを拡大する入管法改正法案を11月2日、閣議決定した。政府は今国会で同法案を成立させ、2019年4月から施行させたい方向だ。
安倍晋三首相は「労働力の受け入れであって、移民政策ではない」と言い切り、反発の声をいなそうとしている。しかし、そもそも移民として定義しようとも、移民とせずに単なる労働力の受け入れであると定義しようとも、社会へ与える影響には大差ない。今後、より丁寧な議論が必要になるだろう。
外国人労働者の受け入れ問題については、今後とも多面的な角度から取り上げていくが、本稿ではまず改正法案の背景と課題をみていく。
労働力不足がますます深刻化
日本の労働力不足がますます深刻化しているのは事実。厚生労働省が10月30日に発表した9月の有効求人倍率(季節調整値)は1.64倍で、1974年1月以来の高水準となっている。正社員の有効求人倍率(同)は1.14倍で、こちらも過去最高だ。
就業者数も6715万人と調査が開始された1953年以来で最高記録を更新した。8月の女性の就業率は69.9%で、比較可能な1968年以来で最高値になっている。人口減少だけが原因ではない、社会構造自体の人手不足感が慢性化している。
こうした状況に対処すべく、政府は2017年6月9日に閣議決定した「未来投資戦略2017」で、移民と解されないような仕組みや国民的コンセンサス形成などを進めていくことを決め、2018年6月15日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2018」で「従来の専門的・技術的分野における外国人材に限定せず、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく仕組みを作る必要がある」と枠組みの拡大を宣言した。
日本において就労が認められていたのは、外交官や大学教授、医師や芸術家の他、高度専門的な能力を有する人材として法務省令で定められたものなどと職種に限定が加えられていた。
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