「ナンシー関」と雑誌の「雑」について考える 小田嶋隆氏×武田砂鉄氏が語る

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武田:すごい発言でしたね。加計理事長との関係を問うているのに、ゴルフの価値についての話に……。

小田嶋:あれ、普通の人はびっくりするけど、コアな支持層は「そのとおりだ」と思っているわけだから。

武田:機能してしまうんですよね。「よくぞ言った。◯◯人に乗っ取られているTBS側も慌てふためいていたぞ!」なんて反応になるんでしょうか。

ナンシー関さんは“芸能批評機関”だった

武田:先日、小田嶋さんが書かれていた日経BPのコラム(「新潮45」はなぜ炎上への道を爆走したのか)も、ちょうど小川氏の話題でしたが、雑誌の「雑」をどう考えるかという議題について書かれていましたね。

「新潮45」のあの特集についても、色々な意見が集まっているのが雑誌なんだからOKじゃん、との把握で終わらせている人がいる。雑誌の「雑」をどうして認めないんだ、との主張も見かけます。今はどの雑誌も、雑誌の「雑」の部分が……えっと、わかりますか、今、なんとかして、ナンシー関に持っていこうとしているんですけど(笑)。

小田嶋:構成の妙ですね(笑)。

武田:雑誌の「雑」をどこまで認めるかって、今、どの雑誌も下降気味にある中で、改めて問われていること。「新潮45」がやった技は、その「雑」をどんどん乱暴に、濃厚な味付けをしていけば、とりあえず顧客は確保できるだろうという企(たくら)み。で、結局、「雑」が一色になってしまった。

小田嶋:じゃあ、私も強引にナンシーに戻しますけれど。

武田:戻すというか、まだ始まってないんですけどね(笑)。

小田嶋:そうか、始まってなかった(笑)。

ナンシーさんがいた時代というのは、ナンシーさんがいたということもあるけど、雑誌にとっても一番幸福な時代でしたよね。雑誌がたくさん売れていたこともあるし、雑誌読者といわれる人たちが、日本のボリューム層、働き盛りの層になっていたわけです。みなそれぞれ、自分の好きな雑誌はこれ、というのがあった。1980~1990年代にかけては、どんな雑誌を読むか、というのが、その人の人となりを表していましたよね。

武田:自分が読んでいる雑誌を告げれば、それが自己紹介になる、というような。

次ページ書き手、雑誌にとって幸福な時代
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