(最終回)新規事業立ち上げのプロセス(後編)

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5.その他、成功確率の向上に向けて
 企業内起業の場合、関係者に会社を立ち上げた経験者が創業者以外にいるケースはまれです。つまり、どんなに既存の仕事で有能な社員を集めたとしても、起業に関しては全員が未経験者なのだといってもいいでしょう。
 さらに、全員未経験者でありながら、そこには組織としてのヒエラルキーが存在しているので、下の人は上位の人の指示に従って動かざるをえません。しかし、一度も会社を起こしたことのない上司が的確な指示を出せるはずがなく、そのままの体勢で進めば、ただでさえ低い新規事業の成功確率はさらに下がり、限りなくゼロに近づいていくことでしょう。
 これを防ぐには、新規事業開発チームのなかに、起業経験が豊富で、とくに企業の行う新規ビジネスの立ち上げに関するスキルとノウハウを持った外部のプロ(アドバイザーやコンサルタント)を加えることです。
 この時期に何をやるべきかという指示を随時受けられれば、無駄が省けますし、間違った方向に行くことも避けられますので、新規事業の成功確率は確実に上がります。
 また、一定期間彼らと一緒に仕事をすることで、起業に必要な知識やマインドセットなども学ぶことができます。こと新規事業に関しては、外部のプロを雇うことは限りなく大きいといえます。ただ、アドバイザーやコンサルタントといってもカテゴリーによって、得手不得手があります。新規事業立ち上げが得意な、実務経験の豊富なプロを選ぶ必要があります。

 また、新規事業を既存事業と同じ組織編成で行うと、他の部署から横やりを入れられたり、意思決定までに時間がかかりすぎたり、また定型的な書類や会議のために時間を多くとられるということもあるかと思います。
こういったロスを最小にするために、新規事業を社長直轄で実施するなどの組織編成上の工夫も検討するとよいでしょう。


 いかがでしたでしょうか。
 全6回で、新規事業立ち上げ(企業内起業)の罠と回避方法、立ち上げのプロセスとポイントについてお伝えしてきました。
 これを読まれたすべての企業内起業家のご健闘を祈ります。
新規事業がうまくいかない理由
~「プロ」が教える成功法則~
坂本 桂一 著
場当たりが先行しがちで前に進まない新規事業。失敗率は9割以上とも言われる。成功のために何をすべきなのか。200社以上の事業に生命を吹き込んだ「プロ」のノウハウを大公開。

坂本桂一(さかもと・けいいち)
(株)フロイデ会長。事業開発プロフェッショナル。山形大学客員教授。
専門は新規事業創出、ビジネスモデル構築、M&A。1957年京都市生まれ。
東京大学入学後、在学中にソフト制作会社�サムシンググッドを設立する。以後も(株)ソフトウィング、アルファシステム(株)、アドビシステムズ(株)(当時社名アルダス(株))、(株)ウェブマネーなどを設立し代表、会長に就任。うち数社を年商数百億ビジネスに育て上げる(以上すべて現在は退任)。日本のITビジネスの黎明期より、その牽引役として活躍。ソニーSMC70、シャープX68000、WINDOWS3.0J、プレイステーション等の開発にのスタンダードとして成功を収める。
現在、これまでの実業家経験を生かし、ハンズオン型のコンサルティング活動を行っている。
著書に、『頭のいい人が儲からない理由』(講談社、2007年)、『新規事業がうまくいかない理由』(東洋経済新報社、2008年)がある。

(株)フロイデ http://www.freude.bz/
新規事業開発から既存事業の成長戦略立案まで、総合的、創造的なコンサルティングを実施。特色は「事業立ち上げ経験者」を中心としたビジネスパートナーネットワークによる新規事業立ち上げ、経営改善のハンズオン型サポート。特に成熟ビジネスにおける「新しい付加価値」創造において、多くの実績を保有する。
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