ドコモ通信料金「大幅値下げ」に踏み切る真因 菅官房長官の「4割値下げ」発言が広げた波紋
実質の値下げが2~4割までは届かないにしても、還元額が非常に大きいことは確かだ。料金見直しを実施する来年度以降は、今年度見込む営業利益(9900億円程度)と比べて減益となる期間が続く見通しだ。同水準への回復は、2023年度まで待たなければならない。
吉澤社長は、「しっかりした顧客基盤を強化することでスマートライフ領域(金融やコンテンツなど)や(次世代通信規格の)5Gを成長させたい」と、通信料金の減収による減益分を非通信分野の拡大で補うシナリオを強調した。
料金見直しの背景として、誰もが真っ先に思い浮かべるのが、菅義偉官房長官による「携帯料金は今より4割程度下げる余地がある」という発言だろう。菅氏は8月23日にこう発言をして以降、キャリア3社(ドコモ、KDDI、ソフトバンク)をたびたび槍玉に挙げ、「公共の電波を使って巨額の利益をあげるべきではない」などと強く批判してきた。総務省は菅長官の意向を受け、携帯料金などについて議論する研究会を10月に発足させ、議論を進めている最中でもある。
ドコモ社長「今回は自主的にやった」
ただ、携帯料金は許認可制でないため、本来は政府が介入したり、口出ししたりする権利はない。会見の質疑では「菅氏の発言が影響したのか」という質問が出たが、吉澤社長は「政府からの話も当然あったが、料金のマーケットリーダーになるというコミットもあった」と述べ、「今回はドコモが自主的にやった」と関係性を否定した。
値下げの根拠としたものには、利用者への調査などがある。自社で実施した「ドコモの料金プランが分かりやすいか」という調査では48%の利用者が「そうは思わない」と答えたといい、吉澤社長は、「これまで様々な還元をしてきたが、料金プランが複雑でわかりにくいという声がある。お客様の声を真摯に受け止め、シンプルでわかりやすい料金プランに大胆に見直していく」などと述べた。
そのほか、吉澤社長は来年10月に予定されている楽天の通信キャリア参入も挙げ、「先んじて競争力を強化する」とも述べた。また、「(値下げによって)顧客基盤や回線基盤を強化することで長期的な価値の向上が図れる」などの理由も挙げた。
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