バーバリーなき三陽商会、描けぬ「成長戦略」 宣伝強化やデジタル化の推進を打ち出すが…

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三陽商会が希望退職の募集に踏み切るのは、今回で3度目となる(記者撮影)

成長の要と据えたはずの事業が振るわない。焦りが募る中、9月下旬には販売職を除く全社員約1000人を対象に、4分の1に当たる250人程度の希望退職者を10月末から募集すると明らかにした。

希望退職の募集は2013年と2016年に続く3回目だが、これまでは募集開始の3~4カ月前に詳細が発表されたのに対し、今回はわずか1カ月前。今夏には人材確保や現場の士気向上の一環で、1年以上勤務する販売員を正社員化する制度を導入し、約800人の販売員を正社員化した矢先でもあった。

「(希望退職によって来期は)かなりのコスト削減を予定しているので、売り上げがそんなに伸びない中でも利益が出せる体質になる」(大村靖稔常務執行役員)

商品の存在感が薄い成長戦略

想定以上の売り上げ不振を踏まえ、今下期は広告宣伝費を追加投入し、既存ブランドのファッション雑誌や新聞広告への掲載に力を入れる。岩田社長は、これらマーケティング施策や販管費の圧縮で2019年度の営業黒字化を目指すと宣言し、デジタル化やM&Aの推進のため2020年までに100億円超の投資を計画する。

三陽商会の岩田功社長は「バリューチェーン全体をデジタルで構築し直していく」と強調し、デジタル化やM&A推進のため100億円超を投資することを明らかにした(記者撮影)

実際、変革に向けて地盤を固めようとする様子はうかがえる。今年に入り、ラグジュアリーブランドのEC支援を行うルビー・グループを買収したほか、AI(人工知能)による顧客データ分析などを目的としたベンチャー企業・ABEJAとの業務提携も今回の決算と同時に発表した。

ただ、販売や商品企画の“手段”に対する具体的な投資が目立つ一方、商品そのものをどう強化するかという点は見えづらい。決算説明会では、同社のオリジナルブランドである「エポカ」の事業拡大を検討しているという説明があったくらいで、各ブランドの今後の商品戦略やターゲット層の設定などに関する具体的な言及は乏しかった。

「ほんとうにいいものをつくろう」を経営理念に掲げる三陽商会。バーバリーという金看板を失っても、長年使い続けられる品質やデザインを兼ね備えた商品づくりを強みとしてきた。黒字化という命題に目を奪われるばかりに、ものづくりを支える地盤が弱まっては本末転倒だ。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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