外国人が殺到する「ジャパン・ハウス」の正体 あのYOSHIKIやウィリアム王子も訪れた
外務省が「新しい日本」の発信に力を入れる背景には、安倍晋三政権が「対外発信戦略(パブリック・ディプロマシー=PD)」に力を入れていることがある。PDとは、自国の海外における利益確保や対外的な目的達成のために、メディアでの情報発信や、文化・人的交流を通じ、海外における存在感やイメージの向上を目指すもの。安倍政権は2015年以来、この活動に800億円もの予算をつぎ込んでいる。
安倍政権がここまでPDを重視するのには、近年、世論が政策決定に果たす役割が増大する中、世界的にPDが外交手段として使われるようになっているからだ。特にアメリカでは、中国と韓国が広報活動や反日ロビー活動といったPDを展開し、成果を出していたために、日本のイメージは悪化していた。
これまでの政府運営の拠点とはだいぶ違う
こうした中、安倍政権は日本の「正しい姿」、つまり「領土保全や歴史認識、積極的平和主義などについての日本の歩みや主張」に対する海外からの「正しい」理解を得るべく、PD強化政策を打ち出した。そして、2015年度には関連予算を500億円も増額し、対外発信の大幅改革に乗り出したのである。
そして、このPD戦略の中核を担うのがジャパン・ハウスだ。SNS上など伝達手段が多様化する中、あえて物理的な拠点を設けたワケだが、同ハウスを構える場所や運営方法などは、これまでの政府関連機関とはかなり異なる大胆な戦略をとっている。
まず、設置場所は、発信効果や日本との関係、地理的配分などの要素を踏まえ選定された。日本が最重要視するアメリカには、首都ワシントンに広報文化センター、ニューヨークに日本文化センターや日米協会などがある。またヨーロッパには、フランス・パリ日本文化会館がある。こうした既存施設がある都市を外した結果、ロンドン、ロサンゼルス、サンパウロが拠点に選ばれたのである。
選ばれた3つの都市も、それぞれ特色が大きく異なる。ロンドンは、世界中の知識層が集うヨーロッパの中心都市であると同時に、数多くの国際的企業がオフィスを構える金融都市である。
対してロサンゼルスは、アメリカにおけるアジアのゲートウェーであり、アメリカ最大の日系人コミュニティが存在するほか、慰安婦像が設置された州の1つであるカリフォルニア州に位置している。ハリウッドは世界随一のエンターテインメント拠点で、土地柄を生かしたコンテンツの活用が可能だ。特に、ジャパン・ハウスが入居するハリウッド&ハイランドセンターはアカデミー賞授賞式会場として有名なドルビーシアターを収容する複合施設でもある。
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