アマゾンが狙う「クラウド世界王者」の座 スタートアップも、大企業も、公共セクターも顧客に

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汎用化が進む機能、アイデアを最大限に発掘する場に

2日目に基調講演に立ったAWSのCTO、ヴァーナー・ボーガス博士は、プレゼンテーションの中で、「Amazon Kinesis」を発表した。このサービスは、1秒間に大量のデータが作り出されるビッグデータを格納し、リアルタイムに分析をすることができるようになる機能だ。基調講演のデモでは、ツイートをリアルタイムに取得してトレンドとなるキーワードを抽出するというデモを行っていた。

2日目の基調講演で披露されたKinesisのデモ

WorkSpaces、AppStream、Kinesisは、まったく異なる機能のように見えるが、インターネットの基幹部分を担うインフラの「汎用化」を推し進めていると見ている。

これまで大規模なユーザー数を裁いたり、特定の役割を作り出すサーバーやネットワークなどのインフラ群を構築することで、他社との競争を優位に運んでいた企業から、インフラ構築のノウハウの優位性を完全に奪い去ることを意味する。今回の発表は、その領域を着実に押し広げており、たとえばAppStreamはゲーム企業のプラットホーム環境を持たないスタートアップが、巨大なゲーム企業と対峙できるようになりうるのだ。

これまでAWSがイノベーションを下支えしてきた大きな要因が拡張されていく。インフラ面での汎用化と低コスト化を次々に推し進めるAWSは、ますます「使わない理由がない」という環境を作り出しているのだ。

ビジネスを始めようとする人は、アイデアやビジネスモデルに注力すればいいし、エンジニアはコードに振り向ける時間をより増やすことができる。結果として、初期から成長過程に至るまでを、設備投資面のコストや実現可能性に左右されずに、サービスを作って提供することができるようになるのだ。

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昨今では大企業や公共セクターでも利用が進む

おなじみのネット企業だけでなく、東京証券取引所やNASDAQといった株式市場、NASAや米国証券取引委員会といった公共セクターがAWSを活用している姿を見せた。自前のサーバーを運用している企業にとっても、バックアップ目的から移行まで、AWSの活用の幅も広げている。

もちろん、AWSのサービスや機能にアイデアを縛られるべきではない。しかし大抵の場合、アイデアを実現したり、本格的に大規模な運用をするにもAWSがぴったりであり、それはスタートアップの起業家も、大企業の中でも同じことだ。既存の概念や枠組みを超えて、クラウドをうまく活用する前提で物事を考えられるかどうかは、ひとつの重要なスキルといえるだろう。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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