ポスト安倍に「飛べない男」岸田文雄はあるか 「いい人」は「どうでもいい人」になりがち

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外相4年8カ月、党3役の政調会長1年3カ月という過去6年の経歴が、知名度や人気に結びついていないのは明らかだ。同氏周辺は「小泉氏は別格として、石破、野田、河野各氏もそれぞれキャラが立っているが、岸田氏にはそれがないのが原因」(側近)と肩をすくめる。

続投となった政調会長の役回りは政策づくりと党内調整で、いわば安倍政権の政策決定の裏方でもある。政調会長が政府の方針に逆らえば、政権内の不協和音として野党などからの攻撃材料となるからだ。過去1年余の岸田氏の仕事ぶりも、まさに「縁の下の力持ち」に徹していた。だからこそ、国民的な知名度も上がらなかったのだ。

そうした中、岸田氏は11日の宏池会総会で、「外交や経済などの総裁直属機関は整理・縮小し、政調に政策論議を一元化する方向を考えるべきだ」とやや緊張した表情で提案した。首相(総裁)への忖度もあって乱立気味だった総裁直属機関の統廃合を進めるのは、岸田流の政調改革ともみえる。居合わせた岸田派幹部も「次に向けた存在感アピールだ」(閣僚経験者)と受け止めた。

総裁直属機関は、党則に基づいて総裁が臨時で設置した機関で、現在は24機関にまで増大している。岸田氏はそれにメスを入れようというもので、「外交戦略会議」など政調内の既存の組織(部会など)とテーマが重複するものの廃止を狙ったものだ。岸田氏は9日に官邸で首相と直談判し、首相から「今回の整理縮小をご決断いただいた」と首相も了解済みだと胸を張った。

実際に、岸田氏は24機関のうち、「外交戦略会議」をはじめ、「日本経済再生本部」「道州制推進本部」など5機関の廃止を決めた。さらに130以上にも膨れ上がった各調査会などの政調下部機関も、人事を含めて白紙に戻して見直しを進める意向だ。もちろん、調査会や特別委員会は専門家を自称するベテラン・中堅議員が会長や委員長を務めているだけに党内の抵抗は強いが、岸田氏は「首相の了解」を錦の御旗に、改革を押し進める構えだ。

第2次安倍政権発足後、国政選挙連勝などでいわゆる安倍1強が定着するに伴い、内政、外交の重要政策の決定は「官邸主導」(自民幹部)が常態化した。ただ、党内には「政策決定での党の主体性が消滅した」(自民若手)との不満が鬱積しており、今回の岸田氏の英断を歓迎する声は多い。

岸田氏が今後、政調改革を大胆に実行すれば、ポスト安倍での存在感が高まり、派閥を超えての支持拡大にもつながる。ただ、岸田氏も「安倍改憲」実現への党内の足場となる「憲法改正推進本部」や、補正予算や来年度予算の編成作業に大きな影響を与える「国土強靭化推進本部」などには手をつけない方針だ。前者は首相が、後者は二階俊博幹事長が強い思い入れを持っているからで、岸田氏らしいバランス感覚でもある。

「外務は票にならない」とのぼやき

岸田氏は第2次安倍政権発足以来4年8カ月も外相を務めた。対外的には「日本の顔」でもあったが、世界を駆け回って各国トップとの首脳会談で「安倍外交」を展開する首相の陰に隠れ、慎重で堅実な発言ぶりもあって「岸田外交」をアピールする場面はほとんどなかった。

併せて、長期間の外交専念で、初代地方創生相として国内をくまなく回った石破氏とは対照的に、「ほとんど地方巡業の機会がなかった」(岸田派幹部)ことが地方での知名度不足につながったことは間違いない。周辺も「外務(そとむ)は票にならないのに岸田氏は真面目だから」と苦笑する。

だからこそ、岸田氏は昨年8月の党・内閣人事に先立つ首相との会談で「党3役への横滑り」を希望したのだ。その時点ですでに総裁3選を視野に入れていた首相は「3選への協力」を条件に岸田氏の政調会長起用に踏み切ったとされる。以来、岸田氏は党の政策責任者としての地方巡業に力を入れてきたが、今回の総裁選で47都道府県のすべてにそれぞれ独自のメッセージを発信した石破氏との差は簡単には縮まりそうもない。

このため岸田氏は各地での個人後援会づくりを本格化させており、2019年夏の参院選でも派閥を超えた地方応援を展開して、地方議員や党員・党友の支持拡大につなげる構えだ。

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