ポスト安倍に「飛べない男」岸田文雄はあるか 「いい人」は「どうでもいい人」になりがち
自民党総裁選からほぼ5週間、2日に発足した第4次安倍改造内閣はさまざまな火種を抱えて24日召集の臨時国会を迎えた。「終わりの始まり」との声とともに、永田町では早くも、9月の総裁選で安倍晋三首相との一騎打ちで善戦した石破茂元幹事長を含む6人の「ポスト安倍」候補の品定めが始まっている。中でも動向が注目されているのが石破氏の最大のライバルとされる岸田文雄政調会長だ。
今年の総裁選出馬見送りで、「飛べない男」「戦わない男」などと揶揄された岸田氏は、「次は出馬する」と宣言し、党の政策決定の最高責任者としての実績づくりに懸命だ。総理・総裁候補とされる6人をみると、派閥の領袖は石破、岸田の両氏だけ。しかも、岸田氏は戦後の自民党政治の中核を担ってきた保守本流の"嫡男"と目されるだけに、党内ハト派の期待も背負う。同氏周辺は「ポスト安倍レースでの狙い目は、党内の"安倍疲れ"と"石破嫌い"をどう生かすかだ」(側近)と将来を見据えるが、「真面目でいい人」とされる岸田氏の次への戦略はまだ見えてこない。
首相の総裁3選を受けての党・内閣人事などを通じて浮かび上がったポスト安倍候補は、石破、岸田両氏のほか、野田聖子衆院予算委員長、河野太郎外相、加藤勝信総務会長に小泉進次郎党厚労部会長の4氏。最年長は62歳の加藤氏で、石破、岸田両氏は61歳、野田氏58歳、河野氏55歳といずれも「政治家として脂の乗り切る年齢」だが、「期待する次の首相」を問う各種世論調査では軒並みトップの小泉氏はまだ37歳だ。
政界での序列につながる当選回数では石破氏が11回と「最長老」で、首相と同期の岸田、野田両氏は9回、河野氏8回、加藤氏6回、小泉氏4回とばらつきが際立つ。さらに、総裁選での拠り所となる「派閥」でみると、石破氏が石破派(20人)、岸田氏は岸田派(48人)の会長でいずれも派閥領袖だが、野田、小泉両氏は無派閥、河野氏は麻生派(60人)、加藤氏は竹下派(55人)の部屋住みだ。総裁選出馬の前提となる推薦議員20人というハードルを越えるためには派閥の大小も重要で、領袖という要素も加えれば岸田氏が優位な立場と見える。
政調会長続投で「総裁候補の立場を維持」
今回の人事で、昨年8月に外相から転身した政調会長を続投することとなったのは、出馬を見送って首相支持に回ったことへの論功行賞とみられているが、岸田氏サイドは「総裁候補としての立場を維持できた」(側近)と歓迎している。併せて、ポスト安倍についても「首相の意中の後継者は岸田氏」(同)と首相の支持への期待を隠さない。次の総裁選で党内最大派閥の清和会(細田派98人)の支持を得られれば、議員票では圧倒的に有利だからだ。
ただ、議員票と同じ比重をもつ党員・党友票(地方票)は、総裁候補としての知名度やアピール力に加え、地方組織を支える党員・党友との直接交流が票拡大のカギとなる。6人の総裁候補の名前を列記した最近の世論調査をみると、岸田氏はトップを争う小泉、石破両氏に大きく水をあけられており、河野氏にも及ばない4位が定位置だ。
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