ホンダ「5代目オデッセイ」発売5年後の通信簿 14センチ車高を上げたミニバン先駆者の現在

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1980年代から日本ではRV(レクリエイショナル・ヴィークル)ブームが起こり、今で言うSUV(スポーツ多目的車)の前身といえる4輪駆動車のいすゞ自動車「ビッグホーン」や三菱自動車「パジェロ」、あるいは、キャブオーバー(運転席の下にエンジンがある)型のワンボックスカーが流行した。

1987年に封切された映画『私をスキーに連れてって』からスキーもブームとなり、アウトドアを楽しむためクルマで出掛けるうえでそうしたRVが活躍した。それらは、たとえばビッグホーンやパジェロはピックアップトラックの4輪駆動車を基にし、未舗装の悪路走破に耐える頑丈なラダー(梯子型)フレームを使い、後輪駆動のリジッド(固定)アクスルによるサスペンション形式を採用していた。

ワンボックスカーは、商用も兼ねる頑丈なフレームと車体構造により成り立っており、それら構成要素はホンダが持たないものであった。ホンダは、モノコック構造の車体に4輪独立式サスペンションを使い、舗装路をしなやかに走る乗用車やスポーティ車を作る自動車メーカーであったためだ。このためRVの流行に乗れず、倒産するのではないかとの危機がささやかれもした。

初代オデッセイは爆発的人気を得た

そのような状況から生まれたのが、初代オデッセイだった。同時に、クリエイティブ・ムーバー(生活創造車)として、「CR‐V」「ステップワゴン」「S‐MX」などが相次いで発売された。それらのうち、S‐MX以外は今日もホンダを代表する車種といえる。これらクリエイティブ・ムーバーに共通したのは、いずれも乗用車のプラットフォームを使い、他車のRVとは一線を画したクルマであるということだった。

オデッセイも、4ドアセダンであるアコードのプラットフォームを活用し、なおかつアコードを生産する工場で製造できる設計がなされた。したがって、ワンボックスカーと違いエンジンはセダンと同じ客室の前にあり、床は低く、ドアは4枚ともヒンジを使う開閉だった。

3列シートを備えるところはワンボックスカーと同じだが、3列目の座席は床下へ折りたためる機構を持ち、3列目の座席を客室内に折りたたむワンボックスカーとは違った乗用車的室内空間をもたらした。あるいは、乗用車のプラットフォームと独立式サスペンションにより、低重心で操縦安定性の高い運転感覚が印象深かった。目線は高いが、走行感覚はセダンに近い快適さを備えていた。

3列シート

実は、ミニバンという言い方は米国で誕生した。多人数乗車できるクルマとしてフルサイズのバンがあり、それに比べ小型であることからミニバンと呼ばれた。前輪駆動の乗用車を基に作られてはいたが、その乗り味は粗く、商用車に近い印象があった。それに比べオデッセイは、やはり前輪駆動を活かしながら、いかにもアコードの客室が広がり天井も高くなったような快適な居住性や運転のしやすさが際立ち、それはこれまでにない新鮮なRVといえた。

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