「1.5度」の気温上昇で2040年は地獄になる 経済的損失は54兆ドル規模に上る可能性も

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トランプ大統領は、人類が引き起こした気候変動に関する科学を嘲り、石炭の使用を増やすと明言し、パリ協定からの離脱を表明している。また、温室効果ガス排出量で世界第7位のブラジルでも、10月7日に行われた大統領選挙で、パリ協定から離脱する意向を示しているジャイール・ボルソナーロ候補が優勢だった(10月28日に決選投票が実施されて、大統領が決定する)。

今回のIPCCの報告書の執筆・編纂にあたったのは、40カ国、91人の科学者で、彼らは6000以上の科学的研究を分析した。パリ協定は工業化以前の水準から2度以上の気温上昇を防ぐことを目的としているが、海面上昇を恐れる小さな島国のリーダーたちは、1.5度の気温上昇による影響も検証するよう求めていた。

1.5度の気温上昇を防ぐには

これまでは数十年後と想定されていた状況が、強力な施策を講じなければ、1.5度の上昇でも2040年には起こることになると報告書は論じる。オックスフォード大学の気候科学者で、報告書の執筆者でもあるマイルズ・アレンは、「排出量のトレンドを反転させ、世界経済を急速に方向転換する必要があることが、この報告書からわかる」と言う。

報告書によると、1.5度の気温上昇を防ぐには、2030年までに温室効果ガスによる汚染を2010年のレベルから45%削減し、2050年までに100%削減する必要があるという。さらには、今日電力源の40%近くを占める石炭を、2050年までに1~7%に減らし、風力や太陽光などの再生エネルギーが占める割合を、今日の20%から67%に拡大する必要がある。

「この報告書ではっきりと示された。石炭の利用をなくさなければ、温暖化を抑えることはできない」。デューク大学の気候科学者で、報告書の執筆者メンバーであるドリュー・シンデルは述べた。

地球温暖化を食い止めるには石炭の利用をやめなければならないという見解に対し、世界石炭協会は異議を唱える。暫定CEOのケイティ・ワリックは文書で、国際エネルギー機関が「今後も石炭が一定の役割を果たし続ける」と予測したことを引き合いに出した。

ワリックによると、世界石炭協会は今後も政府に対し、炭素捕捉技術に投資をするよう働きかけるという。炭素捕捉技術は、現在は商業利用をするには高価すぎるが、その技術があれば石炭を広く使い続けられる可能性が出てくる。

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