軽減税率導入の代替財源はどう確保するのか 宮沢洋一・自民党税制調査会会長に聞く

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宮沢洋一(みやざわ よういち) /1950年生まれ。東京大学法学部卒業後、大蔵省(現財務省)に入省。米国ハーバード大学留学(行政学修士取得)。宮澤喜一政策秘書を経て、2000年衆院選挙で初当選。経済産業大臣、産業競争力担当大臣、原子力経済被害担当大臣などを歴任。(撮影:今井康一)

――消費増税時の駆け込み需要と反動減を抑えるための経済対策では、自動車購入者の支援が柱となっています。日米貿易協議で日本の自動車産業に対するアメリカからの圧力も高まりそうな中、何かと注目度が高いですね。

日米の交渉と国内の自動車関連諸税は、論理的には直接結び付いているものではない。ただ、アメリカで自動車が売りにくくなったりして自動車会社の体力が落ちるといった面では、税の対応は間接的には関係していると言える。

自動車関連諸税では、短期と中長期の2つの側面がある。短期的な話は、消費増税前後の需要の平準化。これについて今年度の税制改正で議論する。日本自動車工業会や経産省などの考えを聞いている一方、自動車関連諸税の多くは地方税収であり、地方への目配りも必要だ。

――消費増税時の来年10月に現行の自動車取得税は廃止され、代わりに自動車購入時に納付するものとして、燃費性能によって税率(0~3%)が変わる「環境性能割」が導入されることになっています。消費増税対策としては、どのようなものが考えられますか。

(環境性能割を一定期間、減税することなどによにより)地方税に減収が生じても、国がそれを補填するといったことは、駆け込み需要と反動減を抑えるための経済対策予算が今後、組まれる中で、考えられるものだ。

自動車関連諸税は自治体への影響が大きい

――中長期的な話はどうですか。

自動車の取得や保有に関連する税金が諸外国に比べて高いと指摘されているが、それは確かだろう。ただ一方で、ガソリンや軽油にかかる揮発油税は、アメリカなど国土が広い国を除けば、日本は世界的に低いのも事実だ。そういう観点も考えていかなければならない。

自動車関連諸税は地方にとってかなり大きな税収で、自治体は道路を作ったり直したりするのに巨費をかけている。こちらのほうは短期的な話よりは難しい議論になる。とはいえ、今年の結論でどの程度のものが出せるか、しっかり取り組んでいく。

――保有時の自動車税や自動車重量税などは減税し、代わりに揮発油税を増税して「税収中立」とするのが自然でしょうか。

揮発油税の増税により、燃費のよい自動車が増えて、ガソリンをたくさん使う人が税金を払うという話になれば、話としてはきれいだ。だが、政治的にそのように割り切れるかはわからない。

――自動車には多数の税が複雑にかかっています。税体系を抜本的に見直す考えはありますか。

それぞれの税の歴史があり、それぞれの税収の帰属先がある中で、抜本的にはできないと思う。

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