軽減税率導入の代替財源はどう確保するのか 宮沢洋一・自民党税制調査会会長に聞く

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――消費増税対策としては、住宅購入者への支援策も検討されていますね。

世界的に見て、住宅についてもある程度消費税に配慮している国が多い。自動車と並ぶ大きな消費でもあり、消費増税後の反動減を抑えるための支援は必要だ。具体的には、過去に消費増税を決めたとき、住宅ローン減税、住宅資金の贈与税の非課税措置、すまい給付金(低所得者向け給付金)の3つの支援策の柱をすでに決めており、この枠組みで足りるかどうかを、今後、議論していく。

――給与所得控除・公的年金控除から基礎控除への一部振り替えや給与所得控除の一部引き下げなど、ここ1~2年、所得税の見直しが進んでいます。今年も何か決めますか。

それはない。ステークホルダーがはっきりしている法人税や自動車関連諸税と違い、所得税は全員が対象でその分、議論が難しい。昨年決めた基礎控除への振り替えなどは、2020年分から実施されるため、結果がわかるのも先になる。世界的に高い給与所得控除を減らして、基礎控除を増やすという方向性に変わりはないが、あまり焦らないでやる考えだ。

退職金課税は企業年金やNISAも含めて議論

――退職金課税の見直しも昨年の税制大綱でうたわれています。勤続20年超で控除額が優遇される点が終身雇用優遇だとして、俎上に乗っています。

その議論はしようと思っているが、退職金と密接にかかわる企業年金やNISA(少額投資非課税制度)を含めて議論していく予定だ。終身雇用制度は決して悪い制度ではない。ただ現実に短期間で勤め先を変えたり、フリーランスになったりする人がいる中で、そのような人たちがどのようにキャリアアップしていくかを考える必要がある。一律に勤続20年超の控除優遇をやめるといった単純な話ではない。

――格差是正の観点から、金融所得に対する税率引き上げの必要性も指摘されています。

現行の税率20%は世界的に見ても先進国でいちばん低い。税率引き上げを検討していかなければならない。その一方で、日本経済はまだ決して安定している状況とは言えない。株価が大きく動く局面もある中で、もう少し安定しないとなかなかしっかりした議論はできないのかなとも思う。今年決めるのは難しそうだ。

――大都市の税収の一部を地方に再分配する税源偏在の是正ですが、これは今回の消費増税の段階で強化する方向ですね。

東京都が税収に恵まれている状況について、どう対応するかは大きな議論になってくる。現在よりさらに切り込んで、法人事業税などでの再分配額を増やす方向だ。これについては、総務省の地方財政審議会で議論を粗方こなしてもらう。

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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