主要野党「小競り合い」で望めぬ参院選"共闘" 立憲・国民に故・仙谷氏の嘆きは届かず?

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しかし、立憲民主の枝野氏は「(候補者1本化は)政党間の調整より、市民の皆さんと話し合う中で1人に絞り込まれていけばいい」と政党間協議には距離を置く。さらに、保守中道路線を目指す国民民主は共産との候補者調整について「直接協力することは難しい」と否定し、2016年参院選での「市民連合」方式に期待を示す点では立憲民主と足並みを揃える。

もともと立憲民主と国民民主は、共産を含めた政権づくりは否定する立場だ。とくに保守色の強い国民民主は「共産が天皇制廃止や、自衛隊は違憲で日米安保条約も破棄と主張するのなら、政権をともにはできない」(玉木氏)と繰り返している。

共産の小池晃書記局長は17日の記者会見で、2019年夏の参院選改選1人区で野党間の「相互推薦」を目指す方針を立憲など各党に伝えて協議入りを要請したことを明らかにした。小池氏は「まずは前提条件なしに協議を始めたい」と述べ、臨時国会会期中に「一定の方向性を出したい」と早期決着を求めたが、立憲民主、国民民主は「相互推薦」に応じる気配はない。

24日に開会する臨時国会は、まず首相の所信表明演説に対する衆参代表質問で与野党攻防がスタートし、続く予算委員会が主要野党の政権攻撃の見せ場となる。ただ、首相の泣き所でもある「もり・かけ疑惑」の追及で足並みがそろうかどうかも微妙だ。前通常国会では「対決より解決」を掲げた国民民主が、疑惑追及に及び腰だったからだ。立憲民主も疑惑追及を優先してインターネットなどに「いつまでやっているんだ」との書き込みが殺到する事態を警戒しているとされる。このため「徹底追及」の共産との連携プレーも実現困難とみられている。

「清濁併せ呑む」故・仙谷氏の遺志継げず?

そうした中、16日には、立憲民主、国民民主両党幹部にとって、民主党政権時代からの兄貴分だった仙谷由人(せんごく・よしと)元官房長官が肺がんのために11日に死去したことが報じられた。仙谷氏は2014年の衆院選に出馬せずに政界を引退したが、その後もさまざまな場で後輩議員達を叱咤激励する存在でもあった。

仙谷氏は枝野氏らの後見役でもあり、民主党政権では「影の総理」と呼ばれた実力者。野党だけでなく首相ら政府与党首脳からも「惜しい政治家を失った」との声が相次いだのは、仙谷氏が「理想を掲げながら、清濁併せ呑む現実主義者」だったからだ。仙谷氏は生前、民主党政権時代の同僚たちに「民進分裂後の野党勢力の迷走」を嘆き、悲しんでいたとされる。

仙谷氏の薫陶を受けた枝野、玉木両氏だが、永田町では「仙谷氏が持っていた『小異を捨てて大同につく』という柔軟性と『目的のためには手段を択ばない』というしたたかな戦略性を受け継いでいるようにはみえない」(自民長老)との指摘が多い。このまま政党としての数の争いや高邁な理念にこだわって、次の参院選でもバラバラ野党を引きずれば、「安倍政権打倒の最後のチャンス」(小沢氏)を逸し、「最強の安倍支持勢力」とのそしりを受けることにもなりかねない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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