東京「鉄道大改造」と五輪はどう関係するのか 渋谷や品川の再開発は2020年には終わらない

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なぜ2040年代なのか。先ほどの「都市づくりのグランドデザイン」には、それが四半世紀先であるだけでなく、都民の約3人に1人が高齢者となる時代であることが明記されている。もしそうなれば、現役世代(生産年齢人口:15~64歳)の割合が今よりも減少し、介護はもちろん、都市機能の維持さえも難しくなる。東京にとっては「消滅の危機」と言っても過言ではない状況だ。

東京都政策企画局の推計によれば、東京都の人口は2025年(23区は2030年)でピークを迎えて減少に転じる。2040年には団塊ジュニア世代が高齢者の仲間入りをして、2045年には高齢者の割合(高齢化率)が31.3%となる。2060年代には高齢化率がさらに上昇し、1人の高齢者を1.7人の現役世代が支えることになる。東京一極集中の是正が求められているなか、にわかに信じがたい数字であるが、それぐらい東京では、出生数が死亡数を上回る自然増や、転入者数が転出者数を上回る社会増が見込めなくなっている。そう、今後は日本全体で人口減少が進むので、これまで東京の人口増を大きく支えていた就学・就労による若年層の転入が減り、将来は東京でさえも都市を支えられなくなるのだ。となれば、今のうちから先手を打って対策をする必要がある。

人口減少時代にどう対処するか

ところが、「都市づくりのグランドデザイン」には人口問題に対する具体策が明記されていない。どのようにして人口減少に歯止めをかけるか、現役世代が減っても都市機能を支えるにはどうすればよいか、といったことがあまり記されていないのだ。

その代わり、東京の持続的発展を実現する手段として「活力とゆとりのある高度成熟都市を目指す」とか、「世界をリードする国際ビジネス拠点を育成して国際競争力を高める」「都市の魅力を発信する」などというポジティブな文言は繰り返し登場する。

これはあくまでも東京都の資料に目を通したうえでの筆者の推測であるが、東京都は、多様な国籍の人が住みやすく、グローバルなビジネスをしやすい環境を整えることで、都内で住み、働く外国人を増やしたいのだろう。今後は海外からの流入に頼らないと人口を増やすことが難しくなるからだ。もしそうだとしたら、直接的な書き方をすると海外から移民を無条件に受け入れると誤解される恐れがあるので、意図的にポジティブな文言で飾りながら、遠回しな言い方をせざるをえなかったのだろう。

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