2031年なんば「素通り」危機、南海はどう防ぐ? なにわ筋線で「梅田」直通実現、その影で・・・

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なんば駅に隣接する超高層ビル「なんばスカイオ」の開業で難波はオフィス街として認知されるか(記者撮影)

南海なんば駅の1日平均乗降人員は約25万人。難波エリアにおける鉄道利用者全体の約3割ほどだ。なにわ筋線の新駅が現なんば駅から離れた場所にできても、人気観光エリアである難波の人出が減る心配はなさそうだ。むしろリスク要因は、現なんば駅の利用者が新駅に移ることで25万人の流れに変化が生じ、なんば駅を中心とする百貨店、ホテル、商業施設などの集客に悪影響を及ぼしかねない点にある。

そうした中、なんば駅に隣接する地上31階建ての超高層ビル「なんばスカイオ」が10月17日にオープンした。南海が440億円を投じ、かつての本社ビルを建て替えた。中低層階にショップ、レストラン、医療施設が入居し、高層階はオフィススペース。そのテナント構成になんば駅の生き残り戦略が透けて見える。

ショップフロアには外国人が好みそうな店舗がずらり(記者撮影)

5階の商業スペースで目を引くのは、包丁、箸(はし)、漆器といった日本の調理器具や食器を扱う店が多いことだ。「外国人だけでなく、日本のお客様にも幅広い層にお越しいただきたい」(南海電鉄プロジェクト推進室の森田浩之課長)と言うが、訪日客を強く意識しているのは間違いないだろう。

南海が仕掛ける「医療ツーリズム」

9階は「メディカルフロア」として、CT(コンピューター断層撮影装置)やMRI(磁気共鳴画像装置)など最新鋭の装置を完備した「大阪なんばクリニック」が入居する。MRIは8~10トンの重量がある。「計画当初からメディカルフロアを設ける前提だった。そのため、ビルの構造上も配慮をしている」と、森田課長は明かす。

メディカルフロアにはCTやMRIなどの設備も(記者撮影)

医療行為を受ける目的で外国を訪問する「医療ツーリズム」は世界で拡大傾向にあり、近年ではタイやシンガポールが患者の受け入れに積極的だ。最先端の医療行為を受けた後に、買い物や観光を楽しむ。アジアの富裕層にとっては日本を訪れる動機づけがまた1つ増えるとあって、安倍政権も「新成長戦略」に取り入れるなど、成長期待の大きい分野だ。

南海は2010年に傘下の旅行会社が外国人向けに日本で医療検査を行う旅行商品を開発するなど、医療ツーリズムへの取り組みは長い。2012年にビルの開発計画を発表した際も、新ビルの特徴として医療機能を大きく打ち出していた。大阪なんばクリニックの中川原譲二院長は、「当面は国内向けの検診や外来が中心となる。医療ツーリズムは運営が軌道に乗った後の将来の話」と話す。両者の間で時間軸に隔たりがあるものの、実現すればなんばスカイオのアピールポイントになりそうだ。

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